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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

サムスン事業継承は成功するか?

先月10日、サムスングループ総帥、
二代目会長の李健熙(イ・ゴンヒ)さんが、急性心筋梗塞で入院しました。

よく知られるように、サムスンは世襲企業です。
以前から、健康不安は指摘されていて、
遠くない将来、三代目の李在鎔(イ・ジェヨン)さんに、
事業継承がなされるだろうといわれていました。
今回の事態で、事業継承が加速するのは間違いありません。

サムスンの事業継承は、大きく二つの視点から見ることができます。
一つは、資産の分割です。つまり、お家騒動が起き、
サムスングループのマネジメントに支障をきたさないかということです。

李健熙さんには、長男の在鎔さんに加え、長女の富真(ブシン)さん、
次女の敍顯(ソヒョン)さんと、三人の子どもがいます。
韓国で「ロイヤル・ファミリー」と呼ばれるサムスン創業家の資産を、
三人がもめごとなく相続し、さらに、スムーズに事業継承できるのか。

サムスングループ内では、昨日、事実上の持ち株会社である
サムスンエバーランド上場の方針を発表するなど、
事業継承に向けた動きが活発化しています。
エバーランド上場は、相続税や、株式の買い増しのための
資金調達ではないかと見られています。

私は、当面のところ、相続をめぐる大きな問題はないと見ています。
というのは、サムスンの代替わりは、初めてではありません。
創業者の李秉喆(イ・ビョンチョル)さんには、8人の子どもがいました。
秉喆さんは、争いにならないよう、生前に財産を分割相続しています。
その後、兄弟間でお金にまつわるもめ事は起きていますが、
現在は、すべて解決済みです。つまり、分割相続や係争、
そして解決までの一通りのプロセスを、すでに経験済みなのです。

もう一つの視点は、サムスンが、事業継承後も、これまで通り、
世界一の座を維持し、さらなる成長路線を描けるかということです。

三代目の在鎔さんには、1995年に一度、お会いしたことがありますが、
強面の健熙さんとはまったく違うタイプです。
物腰が柔らかい、貴公子然とした紳士ですね。
ソウル大学を卒業後、慶應義塾大学のビジネススクール、
さらに、ハーバード大学ケネディスクールに学んでいます。
在鎔さんに、健熙さんほどのリーダーシップが発揮できるのか。
これまで、サムスンの経営において何の実績もないではないかと、
厳しい見方もあります。

この問題については、正直なところ、やってみないとわかりませんわね。
二代目の李健熙さんが、初代の李秉喆(イ・ビョンチョル)さんから
事業継承したのは、27年前の1987年で、
いまの在鎔さんと同じ、45歳のときでした。
健熙さんは、サムスンを、現在の超巨大グローバル企業に育てた人物ですが、
会長に就任するまでは、在鎔さん同様、何の実績もありませんでした。

考えてみれば、トヨタ社長の豊田章男さんも、
社長に就任するまでは、メディアからいろんなことをいわれていました。
しかし、リーマン・ショック後の赤字、リコール問題、
東日本大震災、タイの大洪水、歴史的円高などを乗り越えて、
いまや一流の経営者です。

かりに、在鎔さんが会長業に慣れるのに多少時間がかかったとしても、
サムスンには優秀な頭脳役、参謀役が揃っていて、集団経営を行っています。
だがゆえに、健熙さんが入院している現在も、滞りなく事業が進められ、
市場の評価も下がりません。
この点においても、やはり、当面大きな問題は起きないと思います。

トップ交代には、もちろんリスクがあります。
しかし、サムスンは、いずれくるそのときに向けて、
これまで、周到な準備をしてきたはずです。
そう簡単に崩れるとは思えないというのが、私の印象ですね。

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