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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

EMSでTPS(トヨタ生産方式)はどうなるか?

クルマの生産のあり方が一変するかもしれません。
家電と同様に、クルマの世界でも、ついに生産受託サービスが
存在感を持ち始めているからです。

8月5日付、日本経済新聞朝刊は、米国の自動車の受託生産会社
「アンドロイド・インダストリーズ」を“車のなんでも工場”
として紹介しています。
ビッグスリーを顧客にもち、同社のテキサス州の工場では、
ゼネラル・モーターズが大型SUVの生産工程の85%を
アンドロイドに生産委託しているという。
ちなみに、アンドロイドの筆頭株主は三井物産です。

電機産業には、これまでも生産工程だけを請け負う
EMS(電子機器受託製造)がありました。
たとえば、台湾の鴻海は、アップルのiPhoneやiPad、
ソニーのプレイステーション、任天堂のニンテンドー3DSなど
の生産を引き受けています。

鴻海の2013年の売上高は4兆台湾ドル(約13兆円)です。
これに対して、ソニーの14年3月期の売上高は7.7兆円、
任天堂は5717億円です。
つまり、生産を請け負う企業でありながら、
恐るべきことに、発注元のブランド企業以上の売り上げを上げているのです。

自動車産業でも、EMSが力を持ち始めると、同じ現象が起きるのでしょうか。
もし、そうだとするならば、話は、おだやかではありませんわね。

じつは、米国の自動車メーカーがEMSに生産を外注する動きの背景には、
自動車のモジュール化があるのは間違いありません。
記事は、「どのメーカーのどの車、どの部分でも、同じやり方で
つくっているんですよ」というアンドロイド・インダストリーズの
ディレクターの言葉を紹介していますが、それは、クルマがモジュール化
されているからこそ可能なことですよね。

実際、EV(電気自動車)であれば、極端な話、車はパソコンのように、
誰でもつくれるようになるといわれてきました。
現に、宇宙産業に取り組んでいたイーロン・マスクは、
車づくりについて、まったくのシロウトにもかかわらず、
あっという間に電気自動車の大手テスラという会社を立ち上げました。

先日、私は、知人のある設備関係の中堅企業のオーナーから、
こんな話を聞きました。
まるで秋葉原で部品を買ってきてパソコンを組み立てるように、
電池やシステムやプラスティックのボディなどを買い集めて、
電気自動車を3か月でつくりあげることができたよ――
と自慢されました。
私は、この話を聞いてびっくりしましたが、今日の日経の記事を読んで、
さもありなん……と思いました。
思わず、トヨタ生産方式は、どうなるのだろうかと考えましたよ。

かりにも、自動車にEMSが広がるとすれば、
自動車産業の様相は一変することは間違いない。
例えば、中国企業がクルマのEMSに乗り出せば、
既存の自動車メーカーは安心してはいられないでしょう。

自動車メーカーはこれまで以上に知恵を出して、
EMSに負けない車づくりをしなければいけません。
自動車メーカーは、あぐらをかいてはいられませんわね。
まあ、クルマのEMSは、今後、力を持つのは確かだと思います。
そうすると、日立やソニー、パナソニック製の電気自動車が
登場するのも夢ではなくなるのではないでしょうか。

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