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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

千葉市の貸し自転車失敗から何を学ぶか

新しい制度設計に失敗はつきものです。
しかし、失敗にもほどがありますわね。
千葉市の自転車の貸し出しをめぐる社会実験の話です。

24日の朝日新聞(千葉版)によると、千葉市は同市観光協会と共同で、
13年度から「幕張新都心コミュニティサイクル(愛称:マックル)事業」の
社会実験を進めてきましたが、うまく運ばなかったというんです。

「マックル」は、デポジット方式の無料コミュニティ自転車です。
幕張新都心の6箇所に設置されたサイクルポートで、
100円を入れると自転車のカギが開く。
サイクルポートで自転車を返却すると返金される。
事前登録や身分証の提示なしに、自転車を無料で利用できるのがウリでした。

ところが、22日、千葉市は「マックル」の運営形態の変更を発表した。
9月1日からデポジット方式を廃止し、200円に変更したんですね。
しかも、海浜幕張駅構内の観光情報センターで、
身分証を提示しなければいけない。

この変更について、市は2つの理由をあげています。
一つは、広告協賛が集まらなかったことです。
運営費3400万円を広告収入によって賄う計画でしたが、
実際には、2社からしか広告協賛が得られず、収入は2600万円にとどまった。
まあ、行政当局によくある、見込みの甘さですかね。

二つ目は、利用者のマナーの悪さ。
乗り捨てが後を絶たなかったというのです。
市は、「マックル」のスタートに当たり、100台の自転車を用意しました。
たとえば、今年の7月には、一日平均36.3台の自転車が終日行方不明。
すなわち、乗り捨てられていた。
回収しては放置され、回収しては放置され……。
つまり、これが本当の“自転車操業”ですな。

この市の分析は、まあその通りでしょうな。
そりゃ、営業努力が足りないというのは簡単ですよ。
私は、それより何よりも、制度設計のあり方そのものに
間違いがあったのではないかと思うんです。

単純な話、100円で自転車を乗りまわすことができて、
身分の照会もなしとなれば、誰だって気が緩みますわね。
モラルの問題ですな。
制度が乗り捨てを助長した、とまではいいませんが、
利用者の行動についての分析が甘かったんじゃないでしょうか。

とりわけ、中国製が増えたこともあり、
自転車の価格は昔と比べて、格段に下がっています。
少しでもガタがきたら捨てて、新しい自転車を買いますよね。
つまり、“使い捨て”時代ですから、
自転車を大事に扱ってもらうのは難しいと思いますね。

市民の善意に頼った制度設計の詰めの甘さが、
この失敗の原因とみることができるように思うんです。
人の善意に期待できないというか、世知辛いというか、
いってみれば、今の世相を反映しているということでしょう。
善意に依存する制度は、
どんな制度にしても成立がむずかしいということじゃないでしょうか。

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