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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

なぜ、いまフィリピンなのか

フィリピンに熱い視線を注ぐ日本企業が増えています。
いったい、なぜなのでしょうか。
少し、フィリピンについて論じてみます。

フィリピン政府は、この7月、人口が1億人を突破したと発表しました。
同国の人口は、年に約2%ずつ増えている計算です。
13年時点で世界12位、ASEANでは人口2億5千万人の
インドネシアに次ぐ大国です。
平均年齢は23歳、生産年齢人口の総人口に占める割合が増加する
「人口ボーナス期」が、当面続くと見られています。
少子高齢化の真っただ中にある日本としては、うらやましい限りです。

フィリピンではまた、小学校から大学まで、ほとんどの授業が
英語で行われていることもあり、英語を話す人口が多いのが特徴です。
日本人の英語力が相変わらずなことから見ても、
英語力で優位に立つフィリピンの労働力の活用は、
日本企業がグローバル戦略を進めるうえで欠かせません。

加えて、フィリピンの賃金はまだまだ安い。
ちなみに、工場労働者の月額賃金は、2万5千円から3万円。
設計などの技術者の場合でも、約4万円と聞きます。

このほか、「フィリピン・ホスピタリティ」といって、
フィリピン人には、陽気さ、気さくさ、面倒見の良さがあります。
看護婦やメイドなどの人材を世界中に供給していることからも、
「フィリピン・ホスピタリティ」の高さは実証済です。
この「フィリピン・ホスピタリティ」も、日本企業がフィリピンの
労働力を活用する要因になっています。

郵船クルーズが運航する豪華客船「飛鳥Ⅱ」のクルーは、
470人のうち約三分の二が外国人で、そのほとんどがフィリピン人です。
親会社の日本郵船は、マニラ近郊に船員養成のための専門会社を設置していて、
フィリピン人クルーに対して、6か月間、「飛鳥ウェイトレーニング」
を実施しています。

もともと、ホスピタリティの素質をもつ
フィリピン人クルーですから、「和のおもてなし」のノウハウを伝授する
トレーニングを通して、そのホスピタリティにいっそう磨きがかかる。
近年、その優秀なフィリピン船員に対して、
他国の船会社からの引き抜きが増え、日本郵船は大わらわの有様です。

また、本日付の日本経済新聞電子版には、トヨタ自動車と
造船・海運のツネイシ・ホールディングスの事例が紹介されていました。

記事によると、トヨタは、2013年、マニラに近いラグナ州に
「フィリピントヨタ整備学校」を開校しました。
第一期生として、600人が入学。2年間学んだのち、
世界各地のトヨタ認定ディーラーへの就職の道が開かれています。

さらに、セブ島にある常石造船の子会社ツネイシ・ヘビー・インダストリーズ
(THI)は、優秀なフィリピン人に日本の常石造船で研修を受けさせ、
技術インストラクターとして、世界に派遣する計画といいます。

このほか、リゾート地で知られるセブ島のお隣のマクタン島の工業団地には、
中西金属工業のほか、タミヤ、NEC、太陽誘電などの日本企業が進出しています。
フィリピンは、安定した人材供給地と位置づけられます。

日本は、少子高齢化が進み、労働人口の減少が待ったなしです。
英語教育に力を入れてはいるものの、効果は急にはあらわれません。
その不足をいかに補えばいいか。
解の一つが、フィリピンの優秀な人材の力を借りることです。
幸い、日本とフィリピンは空路5時間の近距離にあります。

意外と知られていませんが、フィリピンは今後、
日本企業のグローバル化にとって
欠かせない存在になるのではないでしょうか。

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