Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

朝日の人づくりを考える

朝日新聞の「吉田調書」報道に関する謝罪会見について、
人材育成ならびに組織論の観点から考えてみました。
先日の「朝日の慰安婦問題に関する“謝罪”について」(9月4日分)の
「リスクマネジメント」論についての第2弾です。

朝日新聞の木村伊量社長は、「吉田調書」報道について、
同社の第三者機関「報道と人権委員会」に審理を申し立てたほか、
慰安婦報道については、社外の弁護士や歴史学者、
ジャーナリストなどの有識者などによって構成される
第三者機関を新たに立ち上げ、記事の作成や訂正にいたる経緯、
特集誌面の妥当性、
国際社会に与えた影響について、検証を行うとしています。

こうした対策を講じることで、朝日新聞は、
メディアとしての信頼を取り戻すことができるのでしょうか。
第三者機関による検証も大事ですが、
「慰安婦問題」にしろ、「吉田調書」報道にしろ、
朝日新聞の構造的問題があるのではないでしょうか。
なぜ、“誤報記事”が生まれるのか。
記者の育て方そのものに問題があるのではないかと思います。
つまり、人材育成のあり方にも問題があるのではないでしょうか。

朝日新聞の社内報のタイトルは昔、
「朝日人」と聞きました。
外部の者からすると、「朝日人」といわれてもピンときません。
まあ、真のリベラルを標榜し、権力を監視する
“社会の木鐸”として活躍する人材といったところでしょうね。

ただ、そこにある種の“選民”意識があるとすれば問題です。
重要な仕事をしているからといって、
記者が自らを特別な存在だと思うことは許されません。

「朝日人」の中には、
超エリート意識があるのではないでしょうか。
ひとことでいえば、社内におごりがあったのではないかと思います。
実際、朝日新聞の記者のなかには、
エリート意識の塊のような人が、少なからずいます。

私は、どこまで役に立ったかはわかりませんが、
以前、NHKの若手社員の入局3年研修の講師を、
3年間にわたって務めたことがあります。

なぜ、一介のジャーナリストである私を招いたのかといえば、
社内の先輩社員やカメラマンから話を聞いても、
内向きの偏った記者になりかねない。
ジャーナリズムには、多様性が欠かせない。
他者の目を積極的に
取り入れていかなくてはいけないからだということから、
外部の人間を招いたと聞かされました。

つまり、一つの価値観や特定の思想によって
組織を染め上げるのではなく、
“ダイバーシティ”を重視し、多様な記者を育て上げることで、
新しいジャーナリズムの創造を目指すといったところだったと思います。

朝日新聞も中途採用を積極的に実施するなど、
社員の多様性を確保する施策を進めていると聞きますが、
社外との“交流”を
もっと大胆に進める必要があるのではないでしょうかね。

当然、朝日は全社員にコンプライアンス研修、
リスク管理研修を行っているはずです。
しかし、そうした研修のほかに、
人間性に重点をおいた人材育成が必要ではないか。
すなわち、オープンな風土を醸成し、人の痛みがわかる、
バランスの取れた人材を育てることですね。

ジャーナリズムであれ何であれ、
マネジメントの原点は人づくりです。
人づくりの仕組みや組織のあり方そのものに踏み込んだ、
抜本的な改革を行わない限り、
今回と同じような失敗を避けるのは難しいと思いますね。

ページトップへ