Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ホンダ「N-BOXスラッシュ」開発物語

ホンダの軽自動車「N BOX」のヒット要因は、開発コンセプトに
「女性軸」を取り入れたことでした。
では、昨年12月に発売されたシリーズ第5弾「N-BOXスラッシュ」は、
いったい何を取り入れたのか。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
「ホンダは、女を知らない」
本田技術研究所四輪R&Dセンターの開発責任者、浅木泰昭さんは、
「Nシリーズ」の開発を任されたとき、そう考えました。
軽のユーザーは女性が多い。
にもかかわらず、その認識が薄いのではないか。
女性目線の開発ができていないのではないか。
浅木さんが「Nシリーズ」の開発コンセプトに「女性軸」をもってきた
背景には、強烈な反省がありました。

2011年12月、自転車を積める広さ、女性にとっての運転のしやすさ
などを考慮した「N BOX」が発売されました。
第1弾ですね。

「N BOX」は、12年度23万6000台を売り上げ、
軽の車種別ランキングでスズキ「ワゴンR」を抜いて、一躍、1位になりました。
奇跡といっていいでしょう。

さて、シリーズ第5弾となる「N-BOXスラッシュ」の開発にあたって、
浅木さんは、「既存のNシリーズと食い合ってはいけない」と考えました。
また、競争が激しい軽市場で戦うためには、まったく新しいコンセプトを
打ちだす必要もあると。

既存の4車種とどう差別化するかを模索していたとき、浅木さんは一枚の
スケッチに目を留めました。
そこには、「N-BOX」のルーフを削ぎ取って、“チョップトップ”とし、
2ドアのクーペスタイルに仕上げた車が描かれていました。
「たぶん、遊びで描いたんだと思いますね」(浅木さん)
このスケッチが「N-BOXスラッシュ」の開発のきっかけとなりました。

“チョップトップ”とは、古きよきアメリカで流行した、ピラーを詰めて屋根を
低くするカスタム手法です。
浅木さんたち開発チームは、さっそくアメリカに飛び、カスタマイズショップを
見学しました。
そこで目にしたのは、アメリカの車好きがお金をかけて思い思いに
車をカスタマイズする様子でした。
浅木氏は、「これだ」と確信したというんですね。
ホンダ_浅木氏
「N BOXスラッシュ」は、クールで都会的なスタイルが特徴で、
カリフォルニアダイナースタイルやテネシーセッションスタイル、
ハワイグライドスタイルなど、大人の遊び心がたくさん盛り込まれています。
また、ホンダ独自の「サウンドマッピングシステム」が搭載されていて、
ハイグレード・オーディオで本格的な重低音、高音質サウンドが楽しめます。

どこもかしこも個性的なんです。
カリフォルニアダイナースタイルは、映画「アメリカン・グラフィティ」
の世界そのものといっていいでしょう。
ダッシュボードは赤とチェッカー柄です。
助手席のシートにもチェッカー柄があしらわれています。

浅木さんによると、ターゲットは、都会に住む独身男女、子育てが終わった夫婦です。
時間とお金に余裕があり、ファッションや生活にこだわりをもつ人たちを
意識しているというのです。
「これまで、軽に見向きもしなかった人を振り向かせたい」
と、浅木さんは語ります。

「N BOXスラッシュ」が取り入れたのは「大人の遊び心」。
つまり、都会の大人の男女が楽しい気分で乗れる軽のミニクーパーといったところでしょうか。
これまでの軽にはないコンセプトです。
私は、その方向は間違っていないと思います。
ホンダは、軽の世界にまったく新しい市場を創造しようというわけですね。

ページトップへ