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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

コマツがリードする地方創生

新聞にはこのごろ、「地方創生」という言葉が載ってない日はないほど、
流行語になっています。
今朝の読売新聞の「論点」に、コマツ相談役の坂根正弘さんの、
「本社移転で地方活性化」という記事が掲載されていました。
そこで、今日は、地方創生に向けた企業の役割について考えてみます。

記事のなかで、坂根さんは次のように述べています。
「日本が持続的に成長するには、
東京一極集中に歯止めをかけ、地方経済を活性化しなければいけない。
そのためには、やる気があり、構想力を持つ地方自治体を
国が積極的に支援する仕組みをつくり、
企業も本社機能を地方に移転させて雇用を創出し、
地域経済に貢献することが必要だ」
おっしゃる通りだと思いますね。

私は、13年8月に、坂根さんにインタビューしたことがあります。
その際も、坂根さんは、
「東京一極集中が日本全体をおかしくしている」と喝破されました。
国の行政機関や企業、人口が集中する東京では、晩婚化や少子化が進み、
交通の混雑、地価の高騰などの弊害がますます大きくなっている。
一方、地方経済は一次産業を含めて、ますます厳しい状況に追い込まれている。
東京一極集中が続く限り、東京も地方も、再生の兆しが全く見えない。
これらの問題の解決を政治任せにせず、本社機能の地方への移転を通して、
企業が率先して取り組まなければいけないと断言されました。

なぜ、坂根さんは、本社機能の地方移転にこだわるのでしょうか。
その秘密は、「コマツ」という会社名に隠されています。
「コマツ」は、創業の地である石川県小松市に由来しているんですが、
日本の大企業のなかで、地名を社名に取り入れている企業はほとんどありませんよね。
つまり、コマツは社名からして、地方と切っても切り離せない関係にある。
そのコマツが地方移転を進めずして、地方創生、ひいては日本再生など
実現できるはずがない。こうした自負を持って、
早くから、本社機能の地方移転を進めてきたというわけですな。

実際、2002年、本社の購買部門を創業の地・小松市の粟津工場に移管。
さらに、11年、東京本社や大阪、栃木などに分散していた社内研修機能を集約し、
小松工場の跡地に研修センターを建設しました。

この研修センターには、国際会議場が設置されており、
研修や会議のために、一年間に世界中から約3万人が訪れます。
彼らが小松市内で宿泊、飲食をしたり、土産物を購入することで、
少なからぬお金が地域に落ちていきます。
つまり、本社機能のほんの一部を移転するだけで、
地域経済を活性化できるというわけですね。

また、記事でも述べられているし、私もインタビューで聞いたことですが、
地方移転は、少子化対策にとってもメリットがあるというのです。
コマツの既婚の女性社員の子どもの数について調査を行ったところ、
東京本社の一人当たり0.7人、大阪と北関東の1.2~1.5人に対して、
石川は1.9人。管理職の女性に限定すると、2.6人に上ったといいます。

地方は東京よりも住宅事情がよくて、物価も相対的に安い。
また、三世代で同居する世帯が少なくないなど、
女性がバリバリ働きながら、子どもを育てる環境が整っている。
ですから、地方移転を進めれば、出生率の急激な低下に
歯止めをかけることができるというわけですな。

ご存じのとおり、政府は2015年度、企業の地方移転促進税制を導入します。
東京23区に本社を置く企業が、中枢機能を地方に移転した場合、
雇用者が1人増加するごとに、最大80万円の税額控除が行われる仕組みです。

本社機能の地方移転に向けて、「追い風」が吹いています。
社員の“民族大移動”やビジネスインフラの整備など、
乗り越えるべきハードルは少なくありませんが、
地域創生にむけて企業が果たす役割がますます大きくなるのは間違いないでしょうね。

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