Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

「ミライ」と「エネファーム」は水素社会の両輪

トヨタは14年12月、燃料電池車「ミライ」を世界で初めて発売しました。昨年12月の発売から1か月で1500台を受注し、15年末までに国内400台、グローバル700台の販売台数を目標に掲げています。16年には2000台、17年には3000台の生産目標を打ち出しています。
DSC070542
「ミライ」によって、一躍、水素エネルギーに注目が集まりました。ただ、水素利用は、クルマだけではありません。

じつは、日本のメーカーは早い時期から水素エネルギーの可能性に目を向け、定置用燃料電池、水素発電などの研究開発に力を入れてきました。なかでも、家庭用燃料電池「エネファーム」は、81年から研究が進められ、09年、世界に先駆けて市場に投入されました。

「エネファーム」は、都市ガスから取り出した水素と空気中の酸素を反応させて発電し、家庭で使う電力のほぼ半分を賄うことができます。1号機の価格は、約346万円でしたが、その後、低コスト化が進められ、この4月に発売される「エネファーム」の新型機は、国の補助金を使うと、工事費用を含めたエンドユーザーの実質負担は100万円を割り込む見込みです。

たとえば、家庭用燃料電池のエンドユーザーの負担額を150万円程度とすると、4人世帯で年間5~6万円程度の光熱費削減が可能です。また、家庭用燃料電池が全世帯の約1割の530万台普及すると、家庭部門のエネルギー消費量を約3%削減、二酸化炭素排出量を約4%削減する効果が見込まれます。

政府は、二酸化炭素を排出せず、エネルギー効率に優れた家庭用燃料電池の普及拡大を進めています。ちなみに、東京ガスの「エネファーム」の累計販売台数は約4万台、パナソニックの累計出荷台数は約5万2000台です。
DSC088992
政府のエネルギー基本計画では、20年に140万台、30年に530万台の家庭用燃料電池の普及が打ちだされています。しかし、17年からは補助金が廃止される。普及を促進するには、販売価格の引き下げが必須となる。その場合、一般家庭への販売だけで量産効果による価格の引き下げができるかどうか。

東芝や三菱重工などは、産業用燃料電池の開発を進めています。ちなみに、経済産業省の試算によると、業務、産業用燃料電池の2025年の市場規模は、日本226億円に対して、欧州1575億円、北米4415億円、アジア1125億円といわれています。

注意すべきことは、欧米で、固体酸化物型燃料電池(SOFC)の市場が立ち上がっていることです。SOFC型の特徴は、構造が簡単で大規模化が容易なことに加え、白金などの高価な触媒が不要なことです。SOFC型によって、一気に価格が下がる可能性が指摘されています。

日本はこれまで、燃料電池の技術開発で世界をリードしてきましたが、まごまごすると、海外メーカーに抜き去られてしまうかもしれません。広く海外に目を向けて製品の仕様や低コスト化を考えなければいけないわけですね。

安倍政権は、成長戦略の中で水素社会の実現を掲げています。「ミライ」に象徴される燃料電池車と「エネファーム」など定置用燃料電池の進展が両輪となって、はじめて水素社会は現実のものとなります。日本企業の水素エネルギー分野における国際競争力強化が求められますね。

ページトップへ