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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

広域観光周遊ルートの可能性

観光庁は12日、「広域観光周遊ルート」として、全国7地域を初めて認定しました。今日は、広域観光の可能性についてちょっと考えてみたいと思います。

今回、「広域観光周遊ルート」に選定されたのは、北海道は道東地方の「アジアの宝 悠久の自然美への道 ひがし北・海・道」、東北地方の「日本の奥の院・東北探訪ルート」、中部地方の「昇龍道」、関西地方の「美の伝説」、瀬戸内地方の「せとうち・海の道」、四国地方の「スピリチュアルな島~四国遍路~」、九州の「温泉アイランド九州 広域観光周遊ルート」――の7ルートです。

観光庁によると、ルート認定の狙いは、テーマ性やストーリー性をもった魅力ある観光地域のネットワークを強化し、かつ、訪日外国人旅行者の滞在日数に合わせた広域観光周遊ルートを形成することで、訪日外国人旅行者の周遊を促進し、ひいては地域の活性化を実現する点にあります。お役所用語っぽくて、ちょっとわかりにくいので、中部地方の「昇龍道」を一例として取り上げてみましょう。

もとより、中部地方運輸局と北陸信越運輸局、中部広域観光推進協議会は、2012年に「昇龍道プロジェクト」を立ち上げ、中国を主要ターゲットとして、海外における中部北陸圏の知名度アップに向けたPR活動を進めてきました。それとともに、中部国際空港や東海道新幹線、北陸新幹線をはじめとする、さまざまな交通機関と連携し、広域観光周遊ルートの整備に取り組んできました。

「昇龍道」とは、能登半島を龍の頭に、三重県をしっぽに見立てた、中部北陸の9県にまたがる広域観光周遊ルートです。「昇龍道」には、世界遺産の白川郷・五箇山や熊野古道、富士山、ミシュラン三ツ星に選ばれた飛騨高山、わが地元の名城・名古屋城、来年サミットが開催される伊勢志摩など、超一級の観光スポットが多数含まれています。

東海道新幹線とJR高山本線、近鉄を乗り継ぎ、3泊4日で3つの世界遺産をめぐる旅とか、国際観光都市の高山市を拠点として、信州や北陸の観光スポットに足を延ばす旅など、魅力あるプランがいくらでも思い浮かびますわね。点を線で結ぶことによって、広域エリアの“面”としての魅力が浮かび上がってくる。昨今よくいわれる“広域観光”ですね。

ところで、なぜ、いま、「広域観光周遊ルート」が求められるのでしょうか。記事でも少し触れられていますが、背景にあるのは、訪日外国人観光客の“ゴールデンルート”への一極集中です。

訪日外国人旅行者数は2014年、過去最高の1341万人を記録しましたが、その7割以上が、成田空港から入国して、東京を訪れたあと、東海道新幹線に乗り、富士山をながめながら京都や大阪に向かう超定番ルートを巡ったそうです。一方、東北地方を訪れる外国人観光客は全体の4%にも満たないなど、地方は軒並み大苦戦を強いられています。

つまり、インバウンドの誘致は、地域経済活性化の起爆剤として期待されていながら、その効果が全国津々浦々まで届いているわけではないですな。観光をテコにして地方創生を実現するには、単に外国人旅行者数を増やすのではなく、日本列島をグルグルと、縦横無尽に周遊してもらわなくてはいけない。そのための仕掛けとして、「広域観光周遊ルート」が注目を浴びているというわけですわね。

「広域観光周遊ルート」の真価が問われるのは、2020年の東京オリンピックではないでしょうか。オリンピックには、選手や役員、メディア関係者のみならず、数多くの外国人観光客が訪れます。いかにして、彼らに地方を旅してもらい、オリンピックの経済的インパクトを全国津々浦々まで波及させるか。さらなる仕掛けづくりが必要ですね。

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