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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ホンダ八郷新社長は“暴れ馬”を抑えられるか?

ホンダは6日、ホンダ青山本社で新社長就任会見を開き、新社長の八郷隆弘氏は、「2つのテーマを掲げて、新しいホンダをつくっていきたい」と述べました。
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テーマの一つめは、「グローバル6極体制の進化」です。ホンダは、世界を北米、欧州、日本などの6地域に分け、それぞれの地域で現地生産、開発などを推進する「グローバル6極体制」を進めてきました。八郷さんは、それをさらに進化させる方針です。

具体的には、①グローバル本社のオペレーション機能の向上と、地域の相互補完の推進、②フレキシブルな生産体制の活用による、最適な生産配分――に取り組む計画です。例えば、北米「フィット」、欧州「ジャズ」を日本から供給、次期「シビック」5ドアを欧州から他地域に供給、次期「CR-V」をカナダから欧州に供給します。

「グローバル6極体制の進化」の成功のカギは、グローバル本社が握っていると思います。2015年3月期は、6極で並行して進めてきた増産投資などが裏目に出て、3期ぶりの最終減益を計上しました。「グローバル6極体制」を機動的に動かすのは、簡単ではありません。

グローバル市場での「O&M(オペレーション&マネジメント)」の困難さについては、ホンダに限らず、トヨタを含めて、世界中の自動車メーカーが痛切に感じているところです。

ましてや、ホンダが世界を6極に分けて、O&Mを展開するのは、いうは易く、行うは難しです。例えば、YKKも世界6極体制をとっていますが、各極の日本人の責任者は、“土地っ子になれ”というので、それこそ30年間もその土地に赴任しているケースが稀ではありません。そこまで覚悟してやらないと、本当の6極体制の現地化はできません。まあ、自動車メーカーで曲がりなりにもグローバル市場でのO&Mに成功しているのは、ルノー日産だけではないでしょうか。

もう一つのテーマは、「ホンダらしい商品の開発」です。「いままでにないような技術で、お客さまに感動や喜びを提供する商品を実現するには、チームが一丸となって、とことん考え抜くことが大切だと考えています」と、八郷さんは記者会見の席上、語りました。

八郷さんが何度も何度も語っていたのが、「チームホンダ」という言葉です。ホンダらしい夢と感動の商品を生み出すには、現場での意見のぶつけあい、徹底的な議論が大切だと、八郷さんはいいます。

「チームホンダ」は、かなり難易度の高いテーマといっていいでしょう。というのも、「チームホンダ」は、栃研抜きには語れないにもかかわらず、八郷さんは、ホンダ始まって以来、研究所の社長経験がない社長だからです。

「研究所の社長をやらなければ、社長になれないというわけではない」と断言したうえで、八郷さんは次のように語りました。「22年間、マネジメントをやってきたので、研究所は十分に理解しています。現場の声を聞き、現場がしっかり働けるような体制をつくっていきます」

本田技術研究所、すなわち栃研の技術者たちは、やんちゃで骨太の個性派揃いです。世間の常識など気にかけず、ときに業界の掟を破って挑戦します。不可能を可能にするエネルギーも並大抵ではありません。まあ、それでこそ、ホンダは他のメーカーより、とんがってきたわけですよね。

それこそ、ときに青山の本社にとっては、“抵抗勢力”になります。いってみれば、“暴れ馬”ですね。前社長の伊東さんも栃研には手を焼いてきました。“出入り禁止”になったことがあるほどです。

八郷さんは、“暴れ馬”をどう抑えていくのか。どんな手を使って、とんがった人材をコントロールするのか。ここは、新社長としての力の見せ所といえますね。

八郷さんは、人の話をよく聞く人という評価がありますが、むろん、それだけでは社長は務まらない。ましてや、組織のヒエラルキーよりも個性を重んじる栃研をコントロールすることはできない。八郷さんの手腕には、当分、目が離せそうもありません。

八郷さんがどんな新社長像をつくるか、注目ですよね。

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