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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタの「新人事制度」の狙い

トヨタは、2016年1月から新人事制度をスタートさせます。
生産現場の人事改革ですが、狙いは、いったいどこにあるのでしょうか。

新制度では、まず再雇用制度の刷新を行う方針ですね。トヨタの定年退職者の再雇用制度である「スキルド・パートナー制度」では、これまで65歳まで就労が可能でしたが、賃金は、60歳時の半分ほどになるんですね。だからかどうかは別にして、再雇用者は定年退職者の7割ほどにとどまっていた。

新制度では、条件を満たせば現役時代と同じ処遇で働き続けられる。
実質的な定年延長ですよね。
背景にあるのは、労働力不足に対する危機感でしょう。国内の少子高齢化、生産人口の減少が進む今日、安定して労働力を確保し続けるためには、女性の活用と同時に、元気な高齢者をつなぎとめることが欠かせませんからね。

さらに、新制度で注目されるのは、「技能発揮給」を設けることです。積極性、協調性、責任感、規律などの点から社員を評価し、働きぶりを反映して、技能発揮給基準額7万円に対し、最大1万5000円を積み増しする。逆に、働きぶりが振るわない場合は、最大1万円減らす。これは、ずいぶん思い切った制度といえますね。

「技能発揮給」とは、成果に対応した「成果給」ではありません。能力に対する「能力給」でもない。言葉通り、技能をどれだけ発揮したか、すなわち「努力したか」「頑張ったか」を評価するといったらいいでしょうか。数値化が難しい分野ですよね。
米国型の成果主義でもなく、かつての日本の年功序列型でもありません。トヨタらしい制度といったらいいでしょうかね。

加えて、新制度では、家族手当も見直します。配偶者手当を廃止する一方、子ども手当は1人あたり2万円と、現在の5000円から大幅に増額する。女性の社会進出推進や少子化を考えれば、正しい変化といえるでしょう。未来の顧客に投資するわけですからね。

トヨタに限らず、優秀な人材の確保と維持、さらに、生産性向上に直結する社員のモチベーション向上には、優れた人事制度や評価システムが必要です。とくに、社員が納得して働ける給与体系は重要です。しかし、日本企業は「失われた20年」の間、人事制度や評価システムの改革に、積極的とはいえなかったと思います。

今回、トヨタは、ようやく重い腰をあげたという印象です。それだけ、余裕が出てきたといえるかもしれませんね。いや、このように先取りして“人事制度改革”をしないと、生産人口減少時代を乗り切っていけないということでしょうね。

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