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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

農業の新しい波のはじまり

日本の農業は、いま、転機を迎えています。

10月のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉の大筋合意によって、農業をめぐる議論が活発化しています。
さらに、今年4月にスタートした「機能性表示食品」制度では、野菜など生鮮食品においても健康効果を表示できるようになり、高付加価値をアピールするチャンスが到来しています。
実際、カゴメは、来年2月に高リコピントマト飲料を発売するほか、JAみっかびの温州ミカンや、サラダコスモの大豆もやしなどが、「機能性表示食品」の届け出を受理されましたよね。

農業がグローバル市場に食い込み、成長産業となるために求められるのは、高付加価値化に加え、面積当たりの収穫量を増やしたり、大量生産、コスト削減などによる生産性向上なんですね。

グローバル市場を見据えて挑戦する企業の一つが、村上農園です。
村上農園は、11月20日、「野菜の機能性成分『スルフォラファン』そのメカニズムと最新研究」と題するメディアセミナーに協賛しました。

「スルフォラファン」とは、村上農園が、特許をもつジョンズ・ホプキンス大学とライセンス契約をして生産販売している「ブロッコリースーパースプラウト」に高濃度に含まれる機能性成分です。抗酸化力や解毒力をサポートするほか、自閉症スペクトラム障害の改善や、老化物質AGEの血中濃度を抑制する効果などが発表されています。

消費者の「健康志向」や「安全・安心」を求める声は、日に日に高まっています。村上農園は、「ブロッコリースーパースプラウト」によって、これをうまく取り込み、成長につなげているわけですね。

セミナーでは、米ジョンズ・ホプキンス大学、久留米大学、筑波大学から招かれた専門家によって、「スルフォラファン」をめぐる最新研究の報告のほか、スルフォラファンを効率的においしく取り込むためのメニューの試食会が行われました。

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※試食メニュー。
レシピ考案:管理栄養士 牧野直子さん
アレンジ・調理:東京ステーションホテル総料理長 石原雅弘氏

村上農園は、IT管理を取り入れた植物工場で、効率的に高品質のスプラウトの生産に取り組んでいます。ジョンズ・ホプキンス大学のジェド・ファヒー博士は、席上、「村上農園がつくっているスプラウトは、世界最高です」と太鼓判を押していましたよ。

私は、昨年4月に『年商50億を稼ぐ 村上農園の「脳業」革命』(潮出版社)を上梓しました。直前の2月には、豪雪によって山梨県北杜市の生産センターが甚大な被害を受けましたが、村上農園は、すでに、その被害から立ち直っています。
昨年12月期の売上高は約46億円でしたが、今期はすでに50億円を突破。主力の豆苗に加えて、機能性野菜の「ブロッコリースーパースプラウト」が伸びているとか。

新規事業の準備も、着々と進めています。昨年秋、オランダでツマモノ野菜を扱うコッパート・クレス社との契約に調印しました。B2B分野において、ツマモノ野菜による新しいビジネスを開始する予定です。今月、北杜市に新しい生産設備を開所しました。

農業を成長産業にするためには、ビジネスの視点が欠かせませんよね。
いまや、植物工場の温度、湿度、肥料、水分などのIT管理はもちろん、ドローンによる農薬散布やセンシング化などが行われるようになっています。ところが、国内の農業の機械や建物などへの投資額は、90年代後半以降減少しているといいます。

現状維持しようとすれば、縮小する。これは、農業、工業、サービス業など、すべてに共通します。研究開発、設備投資、新規事業への取り組みなどを行い、つねに成長を目指さなければ、衰退あるのみです。
その意味で、村上農園の“挑戦”は、示唆に富んでいるといっていいでしょう。

 

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