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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

東芝は生まれ変われるか

東芝は、18日に2016年度の事業計画説明会を開催しました。
社長の室町正志さんは、これまでの会見のなかで初めて、頭を下げて謝る場面がありませんでした。これまで室町さんは、こういっちゃあなんですが、記者会見の席上、もうコメツキバッタのように、お気の毒にも頭を下げ続けていましたからね。
声や表情にも、少し明るさを感じましたね。
ようやく、経営が前に進み始めるのかな、という印象ですかね。

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※18日に会見する東芝社長の室町正志さん。

東芝はこれまでに、パソコンや半導体、HDDなどの縮小のほか、変圧器や蓄電池の海外事業を縮小、テレビの海外における生産販売撤退が発表しています。そして、東芝メディカルシステムズはキヤノンに、家電部門は中国の美的集団に売却が決まっているんですね。

グループ人員は、16年度末に、14年度末比3万4000人減となります。17年4月入社の新卒採用は中止します。今後も、工場や土地などの保有資産の売却を検討し、「聖域なく見直す」としています。いまさら、あまりにも遅過ぎたといっても仕方がないことですが、まあ、ようやく構造改革にメドがついたといったところでしょうかね。

次は成長戦略が必要になりますが、もともと東芝には、シャープとは違って“稼ぐ力”はあるんですね。
今後、主力事業に据えるのは、①半導体、②原子力や再生エネルギーなどエネルギー事業、③エレベーターや空調、照明、水処理、鉄道など社会インフラ事業の三つです。

②のエネルギーについていえば、東芝は、原子力、火力、水力、メガソーラーなど、世界最先端の発電技術をもつほか、揚水発電、地熱発電は世界シェアトップです。
エネルギー事業の安定収益領域には「スマートメータシステム」が含まれますが、スマートメーターは、国内でようやく普及し始めたところです。つまり、これからのビジネスなんですね。

じつは、スマートメーターをはじめとするスマート・コミュニティ事業は、先々代社長の佐々木則夫さんが力を入れていた分野ですよね。佐々木さんは、2010年に設立され、参加企業400社以上の「スマート・コミュニティ・アライアンス(JSCA)」の会長まで務め、日本のスマートシティ事業の旗振り役を担っていました。

スマート・コミュニティ事業は、総合力が求められます。
その点、東芝は、エネルギーだけでなく、情報、セキュリティ、水、交通などの事業を抱え、ICTや制御技術などももっています。それらをクラウドで統合し、社会全体の効率化を図るなどスマート・コミュニティを実現するパワーがあります。

佐々木さんの構想は、少し時期が早すぎたのかもしれません。
実際、スマートメーターの普及などによって、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)、BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)、CEMS(コミュニティー・エネルギー・マネジメント・システム)など、ようや“スマートグリッド”のく道筋が見え始めたところですからね。

東芝は、スマート・コミュニティ事業において、“アグリゲーター”のビジネスの展開も考えられますよね。その意味で、東芝にとって、スマート・コミュニティ事業は、大きな可能性があるといえますね。

東芝は、とりあえずリストラにメドがつき、三つの主力事業で方向性が見えた。ここから、生まれ変わることができるのか。再建への道のりは、始まったばかりです。再生できるかどうかは、これからが本番、正念場ですよね。

※スマートグリッド、スマート・コミュニティ等については、拙著『「スマート革命」で成長する日本経済』(2013年/PHP研究所)に詳述しました。東芝の取り組みについても触れています。ご興味のある方は、是非ご一読ください。
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