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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

三菱自動車の再建は可能か

昨日、三菱自動車は、社内調査の報告書を国土交通省に提出し、社長の相川哲郎さんらが記者会見を行いました。

今回の事件は、4車種で燃費試験データの改ざんが発覚しましたが、まだ、全容は見えていません。ほかの車種でも不正行為があった可能性もあります。
実際、国が定める方法とは異なる方法で燃費計算をする不正は、1991年から行われていたといいます。

ご存じのように、三菱自動車は、00年以降、リコール隠しが明らかになりました。三菱商事出身の益子修さんが、05年に社長に就任し、社内改革を行ってきたはずでした。
ところが、実際には「改革」とは名ばかりで、91年から続いていた不正は正されなかったというわけですから、根が深い。どこまで腐っているのかといわざるを得ません。

今回の件で、責任重大のはずの三菱自動車会長兼CEOの益子さんが、会見に現れないのは不自然でしたが、報道によれば、責任をとって退任の方向といいます。益子さんは、いったい、何をどこまで知っていたのか。
開発担当をしてきた相川さんは、不正について「経営サイドは認識していない」といいますが、25年もの間続いていた不正について、何一つ知らなかったとすれば、それもおかしい話ですよね。

相川さんは、また、「会社の存続にかかわる大きな事案だと思っている」と話しました。まさに、その通りでしょう。前回触れたように、業績のふるわない三菱商事、三菱重工業、三菱東京UFJ銀行の「御三家」が、リコール隠しのとき同様に三菱自動車を救済するといっても限界がありますからね。

三菱商事は、16年3月期1500億円の赤字見込み。三菱重工もまた、大型クルーズ船建造難航によって、通期で1039億円の特別損失を計上し、同期の連結純利益は前年比40%減です。とても三菱自動車を救済するだけの体力はないのではないか。

ただし、三菱自動車は、現在3万人以上の従業員を抱える大企業です。また、問題の軽を生産していた岡山県水島工場の従業員は約3600人を数えます。そうやすやすとつぶせないのは、東芝やシャープと同じですよね。では、三菱自動車に再建策はあるのか。

少し先走っていえば、かりにも再建策が三菱グループから出ない場合、産業革新機構の出番があるかもしれない。産業革新機構が中心となって、部分的に内外の自動車メーカーの力も借りながら、再建するシーンが出てくるかも。

もっとも、産業革新機構の支援の基準は、社会的ニーズに対応し、長期的に収益が見込めるような成長性があり、産業や組織の枠を超えて技術を結集するような革新性を有する事業といいます。現在の三菱自動車が、その要件を満たしているかといえば、怪しいかもしれません。

また、日産の出方によっても、三菱自動車の再建策は変わってくるでしょう。
日産は、NMKVによって、三菱自動車と組んで軽自動車の開発を行ってきました。日産は軽自動車用の生産ラインを持たないため、三菱自動車が、水島工場でOEM生産を手掛けてきたんですね。

今後、三菱自動車と日産の提携がどうなるのかも、まったく見えない。不正の全容が見えないのだから、日産が判断できないのも当然です。

いずれにせよ、これから三菱自動車が正念場を迎えるのは、間違いありませんね。

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