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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

訪日客2030年6000万人は可能か

今、東京、富士山、京都のゴールデンルートはもとより、観光地と名の付くところは外国人旅行者でいっぱい。銀座や浅草、そして大阪の道頓堀もいっぱい。ホテルも満員、ビジネスマンの国内出張もままなりません。先日、大阪の大手メーカーの部長は、東京出張で宿がとれず、カプセルホテルに宿泊を余儀なくされたといいます。私が直接聞いた話です。つまり、実話ですな。どこへいっても、もう外国人だらけ。
しかし、日本経済の成長は、観光産業のさらなる成長抜きには考えられません。

先月30日、政府は、訪日外国人観光客数の目標を大幅に引き上げました。
従来、2020年に2000万人としていた目標を4000万人に倍増させ、2030年には6000万人にするという。安部晋三政権の成長戦略における目玉の一つであり、地方創生に向けた切り札という位置づけです。

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※岐阜県高山市
昨年の訪日外国人観光客数は1974万人と2000万人に迫り、2020年の目標は前倒しで達成される見込みでした。
それにしても、30年に6000万人とは大きく出た印象です。
ただ、世界に目を向けると、最大の観光立国であるフランスの14年の外国人観光客数は約8370万人ですから、6000万人も、あながち無理な目標ではないともいえます。

訪日外国人観光客数6000万人に向けて、何が求められるでしょうか。

政府はまず、中国、フィリピン、ベトナム、インド、ロシアのビザ発給条件の緩和を進める方針です。一方で、2013年以降の急激な外国人観光客の増加のなかで、指摘されているのが、受け入れ環境の整備ですよね。
大都市では宿泊施設が不足しており、民泊の整備など対策が急務です。地方の観光地ではとくに、通訳が足りない。空港の容量も不足しています。食事場所やメニューの整備なども課題です。

都市部に集中する観光客を、いかに地方に誘導するかも課題です。
これには、交通網やサービスの充実もありますが、何より、地方そのものの魅力向上が不可欠なのはいうまでもありません。
もともと日本の地方には、有力な観光資源が少なくありません。自然や四季、歴史、文化があり、どこへいっても治安はいい。それぞれの地域の特産物があり、食も充実している。温泉も、日本全国、津々浦々にあります。
各地域が、観光資源をもっと生かす努力をしなくてはいけない。岐阜県高山市や北海道ニセコなどの成功例を、もっと共有し、横展開する必要がありますね。

さらに、欧米からの集客も必要です。中国や東南アジアからの訪日客は急増していますが、全体数を現在の3倍にしようとすれば、アジア圏だけでは限界があります。
欧米からの集客も伸びてはいますが、ビザ発給要件緩和のようなインパクトがない分、伸び率は見劣りしますよね。今後、欧米からの集客にも、目玉となる強力な対策がほしいところです。

そして、日本からの渡航者を増やすことも必要ですよ。

どういうことかといえば、日本は45年にわたり、アウトバウンドがインバウンドを上回ってきましたが、昨年、ついに逆転したんですね。
昨年の日本人の出国者数は約1690万人で、90年代以降、横ばい状態です。フランスを見ると、人口は日本の約半分ですが、出国者数は13年に2600万人を超えています。
インバウンド6000万人というなら、アウトバウンドも増やさなければ、何かとつり合いがとれません。ビジネスを考えても、文化交流を考えても、一方通行では成り立たず、基本は相互交流ですからね。

訪日外国人客数6000万人に向けて、課題は山積です。しかし、結論としていうならば、条件を揃えれば、達成の可能性は十分にあると、私は見ています。日本人は意外に気が付いていませんが、日本は世界の人々を惹きつける観光資源にこと欠きませんからね。

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