Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

自動運転技術の課題

1日、朝日新聞社の主催で、「自動運転技術で私たちの移動はどう変わる?」と題したシンポジウムが開かれました。

実践女子大学人間社会学部教授で交通心理学が専門の松浦常夫さん、日産常務執行役員の安徳光郎さんのプレゼンテーションに加え、東進ハイスクール・東進衛星予備校現代文講師の林修さんがナビゲーターを務めるトークセッションが行われました。

CIMG1866

※シンポジウム会場

自動運転については、このブログで何度も取り上げていますが、技術開発をめぐっては、いま、世界中の自動車メーカーや関連メーカーがしのぎを削っています。
自動運転実現の最大の目的は、「交通事故をなくす」ことです。
席上、安徳さんは、「日産自動車では、持続的なモビリティ社会の実現に向けて、クルマが社会においてネガティブに作用する現象を、技術によって解決してしまおうというのを最大の課題に置いています」と、強調しました。
日産は、日産車に乗車した人が遭遇する死亡、重傷事故をゼロにするという究極の目標を目指しています。

日産は、8月24日発売予定の新型「セレナ」に自動運転技術「プロパイロット」機能を初搭載しますが、この目的の一つも、事故低減です。
「プロパイロット」機能は、高速道路の単一車線に限って、渋滞走行と長時間の巡航走行時に、自動車がアクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてを自動制御します。
私もテストコースで試乗しましたが、確かにラクです。日産は今後、18年に高速道路の複数レーンに対応、20年に一般道の自動走行につなげる計画です。

では、実際、「プロパイロット」のような自動運転技術は、事故減少につながるのか。
松浦さんによれば、90分から720分といった長距離ドライブでは、運転時間を5分割したときの最後の時間帯に事故が起きやすいといいます。
また、運転者の心理的な負担は、マナー違反やノロノロ運転、敵意のある振る舞いなど、他車の運転によるものが大きい。

つまり、長時間の巡航走行時に、自動運転技術によって運転者の疲れやストレスを軽減できれば、事故低減につながりそうですよね。

また、席上、林さんは、自動運転車に乗ることで「これが正しい運転技術だというスタンダードとして啓発されていくという方向性があっていいのではないか」と話しました。
安徳さんは、「それは非常にいい意見だ」と返しましたが、自動運転車が、適正な車間距離や加速の仕方など、運転の「お手本」の役割を果たす可能性もありますよね。
試乗して実感しましたが、確かに、運転技術はプロ並みですからね。

断っておかねばならないのは、現状、日産に限らず自動車メーカーが搭載している自動運転技術は、「運転支援」の段階にすぎないということです。
テスラの「オートパイロット」や日産の「プロパイロット」は、自動化「レベル2」相当で、運転中に人が操作しない「レベル4」には、まだまだ及ばない。「自動運転」という言葉が独り歩きし、運転者が技術を過信して事故につながるのでは、本末転倒です。

自動運転の普及には、法整備やインフラ整備に加えて、社会的コンセンサスを築くことが欠かせません。現在の「自動運転」が、「完全な自動運転ではない」ことを啓蒙することも重要です。

そのうえで、自動運転技術は、将来的に、確実に事故低減につながるでしょう。
今回のシンポジウムもそうですが、自動運転の普及に向けて、まずは正しい理解を浸透させることが欠かせないのは、間違いありません。

ページトップへ