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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ウーバーは日本の「公共交通空白地」を救うか

先だって、ウーバーが訪日客の地方誘致に役立つのではないかと書きました。
今日は、ウーバーが、過疎地の高齢者の移動手段となる可能性についてです。

ウーバーといえば、まず何を思い浮かべるでしょうか。
大本のウーバー・テクノロジースは、09年にシリコンバレーで誕生し、わずか7年で世界約70か国、400都市以上で利用可能なサービスを展開。アプリは40言語に対応し、世界でもっとも注目されるスタートアップ企業です。

今月14日には、米ペンシルベニア州ピッツバーグで、自動運転車の試験走行を開始してニュースになりました。

日本においては、14年開始した都内のハイヤー配車サービスに加え、タクシーの配車サービスがメインです。昨年は、利用者の約3割が外国人、出身国は99か国に上ったといいます。

ちなみに、日本の拠点は東京・恵比寿にあります。先日、訪問する機会がありましたが、まさに「スタートアップ」という趣の事務所です。

じつはいま、そのウーバーが、都内だけでなく、全国の過疎地から、おじいちゃん、おばあちゃんの移動手段として注目を集めているんですね。

ウーバーは、今年に入って、過疎地で相次いでサービスを開始しました。5月にスタートしたのが、京都府京丹後市丹後町の「NPO法人気張る!ふるさと丹後町」へのシステム提供です。もう一つは、先月末、北海道枝幸郡中頓別町でスタートした「相乗り」の実証実験へのシステム提供です。道路交通法に定められた「公共交通空白地有償運送」にあたります。

丹後町の取り組みを見てみましょう。
同町は、人口約5500人の過疎地です。65歳以上の高齢者率4割、8年前に町内からタクシー会社が撤退。路線バスの本数はわずか。足腰の弱った高齢者は移動手段に困ることが多い。

そこで、京都府からウーバージャパンに相談が持ち込まれ、「NPO法人気張る!ふるさと丹後町」に、ウーバージャパンがシステムを提供することになったといいます。

システムを簡単に説明すると、地元ボランティアドライバー18人が自家用車でタクシーと似たサービスを提供します。最初の1.5㎞までは480円、以遠は120円/㎞。ウーバーのマッチングシステムによって、移動したい人とドライバーをマッチングします。移動したい人は、アプリ上で乗車位置を指定して「依頼する」をタッチ。ボランティアドライバーがアプリ上でOKすれば、マッチング完了。依頼者のもとにドライバーがかけつけます。運行時間は午前8時から午後8時まで、365日です。

ボランティアドライバーを買って出たのは、地元の漁師や農家、住職、牛乳配達や新聞配達を行う人などさまざまだといいます。みんな、地元の高齢者らの役に立ちたい、町を元気にしたいと、一生懸命なんですね。

もちろん、高齢者がスマートフォンの操作に不慣れだったり、クレジットカードの普及率が低いなど課題はあります。しかし、高齢者の移動手段の確保に悩む自治体にとって、このシステムは解決策の一つになり得ます。実際、ウーバーには問い合わせが多く寄せられているそうです。

シリコンバレー発のベンチャー企業は、日本の過疎地にどこまで順応し、浸透するか。逆に、過疎地はいかに、先進技術の恩恵を生活に取り込むか。試みは始まったばかりです。

確かなのは、成功すれば全国の自治体にとって朗報だということですね。

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