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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

サントリーワールドリサーチセンター④ サントリーの青いバラの誕生秘話

サントリーは、自然の恵みを科学的に探求し、新たな感動体験をつくりだしてきました。一例は、ご存じ、世界の誰も実現したことのない青いバラの開発です。

「サントリーワールドリサーチセンター」の3階に並ぶ実験室を案内してくれたのは、「サントリーグローバルイノベーションセンター」研究部で主幹研究員を務める松尾嘉英さんです。

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松尾さんは、北海道大学に学び、天然物有機化学の専門家として、マリンバイオテクノロジー研究所で海の微生物を研究していました。2007年にサントリーに入社し、現在は、飲料全般の基礎技術を研究しています。

「飲料中の何がおいしさを感じさせるのか、何がまずさを感じさせるのか、よりおいしくするにはどうしたらいいかの研究をしています」
と、松尾さんはいいます。

ご存じ、トクホ飲料「伊右衛門 特茶」は、ここでの研究から生まれました。キッカケは、マメ科植物エンジュの花の蕾からとれる植物由来の成分「ケルセチン配糖体」に、脂肪分解酵素を活性化させる働きを見出したことによります。

トクホ(特定保健用食品)を取得するには、エビデンス(裏付け)が必要です。300人の被験者を対象にした効能評価試験で、「ケルセチン配糖体」が入った飲料を飲んだグループのほうが、入っていない飲料を飲んだグループよりも、脂肪面積が小さくなったことが実証されました。

いくつもの実験室が並ぶ廊下を奥へ奥へと進んでいくと、植物研究室がありました。青いバラの研究室を少しだけ見せてもらいました。

バラには、青色色素をつくる能力がないことから、いくら交配を繰り返しても、青いバラの実現にはいたりません。

サントリーが、オーストラリアのベンチャー企業フロリジン社(旧カルジーンパシフィック社)と共同で、バイオテクノロジーを用いて青いバラの開発に着手したのは、1990年です。

実験室の中に入ってみると、そこには、無数のシャーレが並んでいました。シャーレの中で培養されているのは、「カルス」と呼ばれる細胞の塊です。

青いバラをつくるには、「カルス」といわれる細胞の塊に青色遺伝子を導入する必要があります。それを育てて、バラを咲かせるのです。「カルス」をつくるだけでも1年程度かかるそうです。

「これは、分化する前の状態ですね」
と、松尾さんはあるシャーレを示して語りました。

「カルス」状態のバラを、再分化させて植物の形に戻し、研究棟の脇にある温室に移して花を咲かせます。

指摘するまでもないことですが、研究は非常に地味で、時間のかかる根気のいる作業です。

サントリーは、20年におよぶ研究を経て、2004年に青いバラを発表し、09年に「アプローズ(喝采)」と名付けて市販を開始しました。

青いバラは、サントリーグループの花事業と海外企業とのコラボレーションによって生まれました。サントリーの内なる知「内知」、そして外部の知「外知」の交流が、未知の感動をもたらした一例です。

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