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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

シーテックに見る“IoT”の課題

千葉市の幕張メッセで開かれていた「シーテックジャパン」が、4日間の開催日程を終えて、閉幕しました。ちょっと、今年のシーテックについて印象というか、感想を述べてみます。

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※「シーテックジャパン2016」の会場の様子

まずいえることは、シーテックは今年、「家電見本市」をうたわなかったことですよね。
コンセプトを180度替え、“CPS(サイバーフィジカルシステム=実空間と仮想空間を融合させたシステム)/IoT(モノのインターネット)”の総合展とした。
1995年にエレクトロニクスショーとしてスタートしたシーテックは、その後、「COM JAPAN」を経て2001年にシーテックジャパンとなった。存在感があったのは、日本の家電メーカーが薄型テレビの画質を競い合っていた2000年代中頃までですよね。

例えば、シーテックは、07年の出展者数895社、来場者数約20万人をピークに、リーマンショックの08年以降は縮小傾向が続いていました。昨年は、出展者数531社、来場者数13万3000人と、いずれも過去最少だったんですね。
家電メーカーの業績低迷に加えて自動車メーカーの出展が増えたことから、シーテックの存在意義自体が問われていました。

巻き返しを図ろうと、打ち出されたテーマが「IoT」なんですね。

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※シーテック会場内の「IoT TOWN」

「IoT」は、ざっくりいえば、機器にとりつけたセンサー、カメラ、マイクなどを介して、さまざまな情報を読み取り、その情報をインターネット上のデータベースに蓄積して分析し、サービスに活用する仕組みです。これまでにないサービスの提供や、業務の効率化が期待されるわけです。

シーテックは今年、「IoT」が開催テーマになったことから、例えば、三菱UFJフィナンシャル・グループや楽天、JTB、セコムなど、従来の家電とはまったく異なる分野からの出展が増え、出展社数648社と、9年ぶりに前年を上回りました。
東芝やソニーは出展しなかったものの、昨年は出展を見送ったトヨタ自動車や、4年ぶりとなる日立製作所が、今年はブースを構えましたね。

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※トヨタの「キロボミニ」(上)とシャープの「ロボホン」(中)、日立の「エミュー3」(下)

数年前まで、4Kテレビ、多機能の冷蔵庫やなどをはじめとする家電が目立ちましたが、いまや様子は完全に一変したということです。
トヨタの「キロボミニ」、シャープの「ロボホン」「ホームアシスタント」、日立の「エミュー3」をはじめとする人型ロボットや、デンソー、セコム、プリファード・ネットワークなどのドローン、村田製作所のセンサーや半導体などです。

 

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※村田製作所のブース

例えば、日立製作所の「エミュー3」は、監視カメラが得た情報をインターネットを介して取得し、別の場所にいるロボットと情報を共有して、道案内などをします。
シーテックにかぎらず、いま日本の産業界は「IoT」に大騒ぎです。「IoT」は、ドイツの打ち出した産業政策「インダストリー4.0」によって一気に花開いたように思われがちですが、よく考えれば、日本の産業界は以前から「IoT」に取り組んでいました。
ユビキタス社会、マルチメディア社会は、「IoT」の前身です。トヨタ生産方式、コマツの「コムトラックス」などは、すべて、閉鎖的とはいえ「IoT」ですからね。

もともと日本は、センサーや電子部品、ロボットなどの先端技術で高い競争力をもっています。その意味では、日本企業に大きなチャンスがめぐってきたといえるでしょう。
課題は、各企業が「IoT」やロボットなどの波をとらえて、新たなビジネスを生み出していけるかどうか。

今回、シーテックは「IoT」を打ち出して盛り上がりを見せましたが、前述のようにドイツは、産業政策として国をあげて「IoT」に取り組んでいます。“インダストリー4.0”がそうですね。日本は、「IoT」に対して産業界のまとまりがなく、バラバラな印象ですよね。
今回のシーテックを一つのきっかけとして、産業界の「IoT」に対する方向性が一つに収斂していけば、グローバル競争を生き残るための道筋が見えてくるのではないでしょうか。

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