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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

パナソニックの植物工場の挑戦――植物工場を手掛ける必然性

メーカーの植物工場への進出が目立っています。なぜでしょうか。

例えば、富士通やトヨタなどは、植物工場のビジネスにタッチしています。東芝は、完全人工光型植物工場を、不正会見の影響もあって、今月末に閉鎖すると発表しました。
パナソニックは、植物工場のプラントビジネスに、本腰を入れようとしています。

パナソニックの植物工場事業は、昨年5月に一度、このブログで「パナの植物工場の商機とは」として紹介しましたが、今回はその後日談です。
じつはせんだって、福島市にある植物工場の見学会にいってきました。

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※福島市の植物工場内。実際の照明は赤青LEDだが、展示用に白色LEDが使われている

植物工場は、いま、世界中で需要が高まっています。
なぜか。まず、世界の人口増に伴う食料不足が懸念されています。さらに、地球温暖化の影響で異常気象が頻発している。日本でも、台風のたびに農業へのダメージが報道され、野菜が高騰しますよね。

その点、植物工場なら、無農薬の安心安全な野菜を、天候の影響を受けず、一年中安定供給が可能です。広い耕作地がなくても、極端な話、砂漠や北極、将来は宇宙でも野菜の生産が可能になるでしょう。

ただ、植物工場には課題が多いんですね。まず、技術的な課題です。何段にも棚を重ねて栽培すると、上段と下段で温度や光、湿度などの栽培環境が異なってしまい、均質な栽培が難しい。

さらに、価格です。植物工場で生産される野菜の多くは単価が高い。つまり、生産コストが高い。初期投資に加え、電気代などの運営コストが原因の一つです。結果、国内植物工場は、7割から9割が赤字運営といいます。

パナソニックは、これらの課題を解決しつつあります。

技術的課題には、空調や照明など家電で鍛えた環境制御技術を駆使しました。一定の条件下でレタスを35日間栽培した場合、80グラム以上に育つ歩留まりを95%まで高めた。

製造業は、コスト削減も得意です。生産管理、原価管理、標準化といった工場運営のノウハウ、省エネ技術などでランニングコストを削減。パナソニックの植物工場は、従来型工場に比べて初期投資は大きいものの、総投資額は3年目に逆転するというんです。

例えば、パナソニックは、照明をすべてLED化する方針で、赤青LEDとすることによって電気代を低減できます。
しかも、蛍光灯の熱を浴びて育った野菜に比べ、LEDで育った野菜は味がいい。「プロ受けする美味しさ」とは、パナソニックAVCネットワークス社アグリ事業推進室の松葉正樹さんのコメントです。

植物工場の運営に必要なほぼすべての技術を社内に抱えていることに、パナソニックが植物工場を手掛ける必然性があるんですね。

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