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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ホンダとグーグルが組む理由は?

ホンダが、自動運転技術でグーグルと組みました。
そうきたかというより、ホンダが組むとしたらグーグルしかなかったと思います。また、グーグルにしても、組むとしたらホンダしかなかった、という印象ですよね。

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ホンダの研究開発子会社の本田技術研究所は、米グーグルを傘下に持つアルファベットの子会社として独立したばかりの自動運転部門ウェイモ(Weymo)と、自動運転技術領域の共同研究に向けた検討を開始したんですね。

ウェイモの自動運転用センサーやソフトウェア、車載コンピュータなどをホンダ車両に搭載し、共同で実証実験を行う計画です。

もともと、自動運転技術をめぐっては、一段ずつ階段を上るように慎重に開発を進める自動車メーカー。当然ですね。クルマといえば安全がかかっていますからね。それに対し、ITの文化は違います。一気にジャンプして完全自動運転を実現しようとするIT企業。両社の間で、次代の自動車産業の主役の座を巡る“覇権争い”が激化していることは、何度も触れてきました。

そのなかで、本来、対立関係にあるはずの自動車メーカーとIT企業が手を組むのは異例で、画期的ですね。アルファベットは、今年5月には、フィアット・クライスラーとも提携を発表しています。が、自動車業界への影響力、ブランド力は、断然ホンダの方が大きいですよね。

ホンダは、ウェイモと組むことで、運転支援技術の延長線上にある自動運転技術に加え、一挙に完全自動運転を実現するという大胆な戦術に出たわけです。

ホンダは日産やトヨタと比較して自動運転技術の開発が遅れていると指摘されてきました。したがって、IT企業の雄で、自動運転技術でトップを走るグーグルと組めば、巻き返しの可能性が十分出てきますよね。

ホンダは今年、AI分野でソフトバンクと共同研究開始を発表しましたが、技術的な自前主義を貫いてきたホンダは、ここにきて、オープンイノベーションに一気にカジを切ったといえます。
環境技術、自動運転、コネクティッドカーなど、技術開発の戦線は広がっていて、自動車メーカー一社がすべてを抱え込む時代ではなくなってきた。一社でやる限り、カネと時間がかかり過ぎますからね。

私は、トヨタや日産は、企業文化からいっても、シリコンバレーのベンチャー企業体質のウェイモと組むことはあり得ないと思います。グーグルのやり方についていけるのは、世界の自動車メーカーの中では、ホンダしかないと思いますね。

というのは、まず、米国ではホンダの先進的ブランド力は図抜けて高い。そして、ホンダは小型ビジネススジェット機を米国で開発し、生産するなど、IT企業に匹敵するチャレンジャブルな企業文化を有します。

それはさておき、先日報道された通り、自動運転の実用化に向けては、世界経済フォーラムの呼びかけで世界連合が発足します。トヨタや日産、VW、GM、保険会社やIT企業など、27社が参加しますが、ここには、フォード、テスラ、そしてウェイモやホンダは、参加しません。
これも、今回のホンダとウェイモの提携と、無関係ではないでしょうね。

自動運転をめぐるルールづくりにおいては、欧州と米国の間の対立もあります。
ホンダは、ウェイモと組むことで、米国市場における自動運転普及に向けた足がかりを得たともいえるのではないでしょうか。
逆に、ウェイモは、ホンダと組むことにより、自動運転システムの“仲間”づくりを進めることができるわけです。

両社はどこまで自動運転に関するデータを共有し、共同開発の“実”をあげることができるか。両社の“覚悟”が問われますね。

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