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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

“解体”の道を歩む東芝

「数字を見ると、正しいとはいいにくい」――。

昨日行われた東芝の会見の席上、社長の綱川智さんはハッキリといいました。約10年前の2006年、原子力事業を手掛ける米ウェスチングハウス(WH)を買収したことについて、正しかったと思うかという記者の質問に対する答えです。

東芝の経営トップが、ここまで踏み込んでWH買収について批判したのは初めてのことです。衝撃ですね。

今回のWHの子会社をめぐる巨額ののれん代損失の直接の原因は、そもそも10年前のWH買収にまでさかのぼる。それを、初めて公式に認めたも同然ですからね。


※昨日の会見で説明に立つ東芝社長の綱川智さん

すでに報道されているように、東芝は、原子力事業ののれんとして7125億円を減損します。結果、昨年の最終損益4600億円に続き、今期も同3900億円の巨額赤字の見通しです。このままでは債務超過となるため、半導体事業を分社化して株式を売却するなどの資本対策を実施します。

いったい、東芝は、原子力事業をどうするつもりなのか。昨日、原子力事業を社長直轄組織として東芝本体が直接関与してリスク管理を行うほか、社長を委員長とする「原子力事業監視強化委員会」を設置し、本体の執行役がリスク評価とモニタリングを実施するという方針を打ち出しました。はたして、これはどこまで有効なのか。むしろ、こんな当たり前の話を、この土壇場に打ち出すなんて、もう、がっかりですよ。いままで何をしていたのかと。

それから、半導体事業の行方です。従来20%以下としていた外部資本導入について、100%も含めて、あらゆる可能性を検討していると、綱川さんは述べました。つまり、マジョリティにこだわらないと発言した。これも、オドロキです。ついに、東芝はそこまで追い込まれたのかと。いよいよ、東芝は“解体”の道を歩み始めたとしかいいようがありません。

さらに、昨日発表予定だった16年度第3四半期の決算報告は一か月先延ばしになりましたが、その理由がまた問題なんですね。

「WH社によるCB&Iストーン&ウェブスター社の買収に伴う取得価格配分手続きの過程において内部統制の不備を示唆する内部通報」があった。監査委員会は、この内部通報の内容について、「経営者による内部統制の無効化が仮にあった場合には四半期連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があると判断」し、決算報告延期の申請をしたわけですよ。

「経営者による内部統制の無効化」とは、わかりにくいですが、つまり、不正会計問題と同様、誰かが不正な圧力をかけた可能性があるということですね。会見では、具体的な内容には触れなかったが、これは、かなり不気味です。東芝には、まだまだ“闇”がありますね。

優良ビジネスだった医療事業を売り払ったのに続いて“虎の子”の半導体まで手放すとは、本当に末期的です。企業体力がここまで落ち、人材も流出を続けるなかで、東芝は生き残っていけるのか。繰り返しますが、完全に“解体”の道を歩み始めたといっていいでしょうね。

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