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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ホンダの世界初の「カーナビ」の意義

マスキー法をクリアしたCVCCエンジン、二足歩行ロボット「ASIMO」など、“世界初”“世界一”の技術を有するホンダが、またひとつ“勲章”を得ました。どういうことでしょうか。

1981年に発売したホンダの地図型自動車用ナビゲーションシステム「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」が、「IEEE(アイトリプルイー)マイルストーン」に認定されました。俗に「電気・電子技術のノーベル賞」ともいわれる、権威ある制度です。


※記念式典。IEEE会長のカレン・バートルソンさん(左)と、ホンダ社長の八郷隆弘さん(右)

ちなみに今年、日本からもう一件、東工大の「温度無依存水晶振動子」が認定されています。こちらは、時計、スマホ、パソコンなどに広く使われる基礎技術です。

「IEEEマイルストーン」について、ちょっと説明してみましょう。
IEEEというのは米国に本部を構える電気・電子・情報・通信分野の世界最大の学会です。「IEEEマイルストーン」は、開発から25年以上が経過し、社会や産業の発展に貢献した歴史的業績をIEEEが認定する制度で、1983年に創設されました。

有名なものでは、アポロ月着陸船、トランジスタ、身近なところだと、液晶ディスプレイ、東海道新幹線なども認定されています。世界で173件、国内では95年以降に29件が認定されており、ホンダは30件目です。いわば電子・電気分野の「技術遺産」を認定する制度ですが、じつは、自動車メーカーの認定は、今回のホンダが初めてです。

では、「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」は、何がすごいのか。
いってみれば「世界初のカーナビ」です。GPSのなかった時代、センサーで移動した方向と距離を検出し、マイコンで移動量を算出して表示する仕組みをつくった。ちなみに、画面は当然ブラウン管、透明な地図シートを手でセットするというものでした。

「今日では、ほとんどの自動車にGPSナビゲーションシステムが標準装備されています。携帯電話やスマートフォンにも内蔵され、1マイル、1分単位の精度で最新状況の追跡が可能になっています。これらはすべて、このマイルストーンがなければ実現されなかったものです」と、IEEE会長のカレン・バートルソンさんは称賛しました。

また、ホンダ社長の八郷隆弘さんは、次のようなエピソードを語りました。
「渡り鳥やふるさとの川に帰るサケも、自分の力で位置と方向を知ることができます。移動体である自動車がその能力を持っていないのはおかしいということから、外界のシステムに頼らず、自分で方位と位置を知ることができるシステムを、当時の先輩技術者が実現しようと考えたとのことです」
ホンダらしい話だと思いましたね。
まったく新しい技術とは、そういう発想からこそ生まれるものかもしれません。

もっとも、認定はもう、済んだ話です。いま、自動車業界は、電気・電子・情報・通信分野も含めて大変な開発競争の最中にあります。ノーベル賞と同じで、30年後、40年後にも「IEEEマイルストーン」に認定されるような技術を開発できる企業、組織、そして人材を育てていくことが肝心ですよね。

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