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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

「郵政カブ」が“次世代バイク”になる日

今月23日、ホンダと日本郵政は、「社会インフラ整備に向けた協業」の検討を開始したと発表しました。何をするのでしょうか。

簡単にいえば、①郵便配達用EV(電動)バイクを開発し、配達業務の実証実験を行う。②郵便局に充電ステーションを設置し、実証実験を行う。③郵便配達業務でホンダの二輪用テレマティクス・サービス「Honda Biz Link」の実証実験を行う。④現在約8万5000台ある日本郵政の郵便配達用二輪車の保守体制を強化する、という四本柱ですね。


※日本郵政副社長の福田聖輝さん(左)と、ホンダ取締役執行役員青山真二さん

以下は、ホンダ取締役執行役員の青山真二さんのコメントです。
「世界的に求められているCO2排出ゼロに向けた取り組みとして、車両の電動化促進は極めて重要です」

環境保全の観点から、モビリティのCO2排出量を抑えることは、いまや世界的な潮流です。四輪各社は次世代環境対応車の開発にしのぎを削るなか、同じモビリティの二輪がガソリン車のままというわけにはいきません。ユーザーである日本郵政にしても、配達業務における環境負荷低減は課題の一つです。

ホンダは、2010年12月に、業務用EVバイク「EV-neo」を発表しています。新聞やピザの配達などに使われるビジネス用途向け初の電動二輪でした。「EV-neo」の開発責任者にインタビューをしたことがありますが、「荷物をたくさん積んで、上り坂途中の赤信号で止まっても発進できるのが業務用のニーズ」と話していました。

業務用のなかでも、郵便配達の車両の使い方は過酷なんですね。

重い荷物を積んでストップ&ゴーを繰り返すかと思えば、山間部の急で長い坂道を一気に上ることもある。まさに“酷使”しなければならず、ホンダはこれまで、郵便配達員のニーズを取り入れた、スーパーカブをベースとする通称「郵政カブ」を専用に開発し、日本郵政に提供してきました。日本郵政の8万5000台という規模は、世界でも最大級といいます。

さて、その“酷使”に、EVバイクは耐えられるのでしょうか。課題とされる航続距離や出力など性能面のニーズを満たしながら、“酷使”に耐える耐久性をもつEVバイクの開発が求められています。

郵便局に設置する充電ステーションについては、日本郵便以外のバイクに利用したり、例えば災害時の非常電源など、さまざまな可能性を検討するという。

興味深いのは、「Honda Biz Link」です。昨年のCEATECにも出展されていました。

四輪用のテレマティクス・サービスは普及しつつありますが、二輪用の同様のサービスを、実証実験する。もともと郵便配達員は、効率のいいルートを通っていますが、現在地の把握や最適なルート探索などでさらに効率を高めるサポートをする。

位置情報や走行距離、走行速度などがわかれば、安全運転の支援に加え、ビッグデータから予防保全などメンテナンスサービスなどにも役立てられる可能性は十分ありますよね。

日本全国津々浦々を走り回る、あの赤と白の「郵政カブ」は、親しみがありますし、趣もありますが、やや古風です。それがみな、近未来的“次世代EVバイク”になる日がくるかもしれない。郵便配達業務に耐えられるEVバイクが生まれれば、B2CのコミューターとしてEVが普及するのに時間はかからないでしょうね。

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