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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

東芝の決算発表の“強行背景”に何があるのか

東芝はいったい、これからどうなるのでしょうか。


PwCあらた監査法人は、東芝の2016年4~12月期決算の発表について、“意見不表明”としたにもかかわらず、なぜ、東芝は決算発表の強行に踏み切ったのか。きわめて異例の事態です。

決算を発表したウラには、上場廃止だけは避けたいという東芝の思惑が働いていたのは間違いないでしょう。

「これ以上、同じことを続けていても意味がないということになり、今回の決断をしました」と、東芝社長の綱川智氏は、4月11日に開かれた決算発表の席上、キッパリと述べました。

つまり、米原子力子会社のウエスチングハウス(WH)をめぐる調査の評価をめぐって、監査法人との間で溝が埋まらなかったわけですよ。

コトの発端は、そもそもWHの経営者が損失を少なく見積もるように部下に圧力をかけていたという内部告発を受けて、監査法人が過去にさかのぼって調査をしたわけですね。

これに対して、東芝は、WHの「60万件のメールをチェックをしても何も出てこなかった」(綱川氏)のを根拠に、WHの不正の調査の続行よりも、3度目の決算延期の回避を優先させたということです。

綱川氏は、「(決算数字に)自信があります」と述べました。しかし、それでなくても、次々と問題が露呈しているのですから、その言葉を信じることができるかどうか……ですね。

まあ、直接かどうかは別にして、銀行筋の圧力もあったでしょう。銀行としては、決算ができないところに新規融資はできないですからね。

東芝が何がなんでも4~12月期決算を発表し、そして5月に発表予定の本決算までもっていかないことには、銀行としてもつきあいきれないとなりかねません。例えば、融資の担保として上場株を差し出されても、上場廃止になるような株を引き受けるのはむずかしいですからね。

「上場廃止は東証が判断すること」と、綱川氏は言葉を濁しましたが、果たしてどうなるか。こんなありさまで、5月の本決算を本当に発表できるのかどうか。大問題ですよ。

また、「そうならぬよう最大限努力したい」と綱川氏は述べましたが、東芝が抱える難問は、これだけではないんですからね。

というのは、東芝は現在、半導体事業をいかに高値で売却するかという難問を抱えています。入札には、海外の競合やファンドなど、10社程度が応札したといわれますが、売却交渉の行方は混沌としています。東芝メモリの売却が思惑通りにいかないとなれば、2年連続して債務超過に陥り、それこそ完全に上場廃止になります。

東芝は、追い詰められているといわざるを得ないでしょう。いまや、東芝の上場廃止は、想定内の出来事として考えなければいけないところまできている……ように思われてなりません。

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