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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

アルヒの「不動産フィンテック」の挑戦

近頃、新聞紙面で「AI(人工知能)」の文字を見ない日はありません。IoTやビッグデータ、AIなどの新技術は、第一次産業から第三次産業まで、ほとんどすべてといえる産業に影響を及ぼすのは確実ですね。

とくに製造業では、工場のIoT化に始まり、IoT家電やコネクティッドカーなど、製品のIoT化、さらに、それらから集まるビッグデータの解析にAIを使うなど、実用化が進んでいます。

金融業や保険業、不動産業などにおいても、同様です。例えば金融業の「フィンテック」、保険版の「インステック」、不動産版の「不動産テック(リアル・エステート・テック)」――といった具合です。

「フィンテック」の例をあげてみましょう。インターネットバンキングや、米アップルの「アップルペイ」などがあります。

このほかにも、例えば、みずほ銀行は、マネーツリーと連携し、アプリで出金明細を閲覧できる「一生通帳」を展開しています。また、個人向け融資事業でソフトバンクと提携し、入金履歴や携帯の支払い状況、職歴などのデータからAIによる融資判断を行っているんですね。

住宅ローン専門金融機関のアルヒは、フィンテックと不動産テックを融合した「不動産フィンテック」ともいうべきウェブサービスを展開しています。利用者がウェブ上で複数の質問に答えると、最適な物件やローンを提案してくれる。こうした技術の活用は、ユーザーの利便性はもちろん、企業にとっても、人件費をはじめ、コストの削減につながります。

さらに、アルヒについていえば、今年1月、住宅ローンの申込書の記入項目を、従来比最大50%削減した。というのは、光学的文字認識(OCR)によって、住民票や源泉徴収票などの証明書類で確認ができる項目を自動で転記するようにしたんですね。

これは、画期的です。ローンをはじめ、金融関係の書類の手書き項目の多さに辟易した経験のある人は多いでしょう。何といっても、時間がかかる。しかも、手書きで記入すると、どうしても“ヒューマンエラー”が発生しますからね。自動転記なら、手間をかけずに正確に記入できるというわけです。

これは、日本初の試みといいますが、考えてみれば、どうしてそんな単純なことを、これまで誰もやっていなかったのか。同様に、新しい技術を使って、より効率的に、生産性をあげられることは、ほかにもたくさんありそうです。

アルヒは今後、「不動産フィンテック企業」として、RPA(ロボットによる業務自動化技術/Robotic Process Automation)の活用を進める考えです。将来的には、AIの導入などによって、信用情報の審査の自動化も目ざします。

もっとも、国別のフィンテックへの投資額を見ると、日本は米国の190分の1というデータもあります。国内は生産労働人口の減少が進むなかで、人手不足解消のためにも、新技術の積極的な導入が求められているのは、間違いありませんね。

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