Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ソニーの業績回復は本物?

長年、ソニーをウォッチングしてきた身としては、やっと、やっと、ついに回復プロセスに入ってきたか……という印象ですね。

ソニーは4月28日、東京都内で会見を開き、2016年度業績概要と2017年度の業績見通しを説明しました。

2016年度の連結業績は、売上高が前年度比6.2%減の7兆6033億円、営業利益が同1.9%減の2887億円、当期純利益が50.4%減の733億円でした。

16年4月の熊本地震でC‐MOSセンサーを生産する熊本工場が被災し、生産が3か月間停止したことや、17年1月、映画事業がコロンビア・ピクチャーズ・エンタテインメントの営業権をめぐり、1121億円の減損処理を計上したことなどが響いています。

「現時点で、リスクと認識しているものはなく、ほかに減損はありません」
28日に開かれた記者会見の席上、副社長の吉田憲一郎さんは、そのようにコメントしました。

不振事業の清算が終わり、いよいよV字回復の勢いに乗るところまできたということでしょうね。

業績の本格回復を支えているのは、エレクトロニクス事業の持ち直しです。もっとも顕著なのは、2年前に2000億円超の赤字を計上したモバイル分野が、102億円の黒字に転換したことです。

モバイル分野の黒字化は3年ぶりです。不採算地域の拡大を縮小し、高付加価値モデルにしぼりこんだことが要因です。

薄型テレビは高価格帯の「4Kテレビ」、デジタル一眼レフもハイエンド製品が好調で、収益の支えになっています。

ソニーは、2015~2017年度の中期経営計画で、エレクトロニクス6分野の安定的な収益性確保を掲げています。副社長の吉田憲一郎さんは、「規模を追わず、新しいことにチャレンジすること」がエレクトロニクス事業の安定化のカギであると語りました。

一時、エレクトロニクス事業の回復はむずかしいのではないかと、私自身、見ていました。正直、時間はかかりましたが、よくぞここまできた……という印象です。

主力のエレクトロニクス事業に対する取り組みが一定の成果を出しつつあることから、17年度に営業利益で5000億円以上とする計画の達成は、いよいよ現実のものになってきましたよね。

「今年は結果を出す年だ。目標は達成可能と考えている」
と、吉田さんはコメントしました。

17年度の連結営業利益の見通しは、73%増の5000億円です。このうち、エレクトロニクス事業の営業利益は、約4100億円と1.7倍になる見込みです。牽引役と期待されるのが、スマートフォンなどに使われる画像センサーです。

「イメージセンサーを中国メーカーに拡販するとともに、スマートフォンの背面カメラのデュアル化、自撮りに使う前面カメラの高機能化が追い風になっています。AVや監視カメラなども需要増を見込んでいます。加えて、熊本地震の費用やカメラモジュール事業も減損もなくなります。十分に達成可能だと考えています」
と、吉田さんは説明しました。

振り返ってみれば、ソニーは2011年度に4567億円という過去最大の大赤字を計上しました。大赤字の原因の一つは、テレビで規模を追い過ぎたことです。

2012年に社長に就任した平井一夫さんは、「一律に規模を追わない収益重視の経営」に取り組んできました。

構造改革はもとより、“選択と集中”を進めた。例えば、パソコンなど、儲からない事業を切り出しました。また、分社化を進め、各事業の採算を“見える化”しました。結果、意識改革も進みましたよね。

そうして、エレクトロニクス事業が復活を遂げつつあるなかで、ゲームや金融に頼るのではなく、本業のエレクトロニクス事業を核にした業績の回復が見えてきた。

ひとまずは一定の成果が出たといえるでしょうが、懸念がないとはいえません。映画や音楽事業などをグループに抱えるソニーが、今後、どのような企業になっていくのか。エレクトロニクス事業の回復を機に、どのような将来像のもとに持続的成長をしていくのか。課題はまだ、残されているといっていいでしょう。

安心はできませんが、“死の谷”を完全に乗りこえ、“躍進”のモードに入った……といえるのは間違いないでしょうね。

ページトップへ