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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

青森県が挑む、地方活性化の独自手法とは?

地方活性化のカギの一つに、地元空港の集客力を高めることがあげられます。ここ数年、地方空港は、インバウンド効果を狙って、格安航空会社(LCC)などの誘致を進めています。

ところが、日本を訪れる外国人観光客は増えているにも関わらず、最近、地方空港の国際線で減便、運休が目立つようになってきた。なぜか。2020年東京五輪に備えて、首都圏の空港が、国際線の誘致に力を注いでいるからです。

LCCの採算ラインは、搭乗率80%以上といわれています。地方空港よりも首都圏の空港の方が搭乗率は高い。となれば、LCCが、地方空港から首都圏の空港に切り替えるのは、当然の流れですよね。

また、北海道は新千歳空港、九州は福岡空港というように、外国人観光客は規模の大きい空港に集中する傾向にあります。

地方空港は、そんな状況を指をくわえて見ているしかないのか。そうしたなかで、気を吐いているのが、青森空港です。

そもそも、青森県は外国人観光客の取り込みに危機感を持っていました。青森県はもとより、東北そのものがインバウンドから取り残された存在でした。

東北地方の年間観光客数は300万人強で、全国の約10%に過ぎません。そこへきて、東日本大震災と福島第一原発事故の風評被害から、東北への観光客数は一時期、大きく落ち込みました。12年、観光立国推進基本計画が閣議決定され、「観光立国」が掲げられたあとも、東北はインバウンドの波に乗ることができませんでした。

私は、青森県の三村申吾知事にお会いしたことがありますが、“元気印”で大変おもしろい知事さんです。三村知事は、“ある秘策”をもって、事態の打開に動きました。

“秘策”とは、「立体観光」です。新幹線、フェリー、空港を組み合わせた「立体観光」によって、北海道から観光客を引っ張ってこようという作戦です。

北海道は年間の外国人延べ宿泊者数540万人という数字が示すように、外国人観光客に非常に人気があります。東北六県の外国人延べ宿泊者数52万人に比べて、北海道の人気はケタ違いです。

「北海道を訪れる人たちに、ぜひ青森県にきてもらいたい。それには、“立体観光”しかありませんでした」と、昨年、お会いしたとき、三村知事は語っていました。

ご存じのように、2016年3月の北海道新幹線の開業にともない、北海道と本州の“境界線”が取り払われました。海外からの旅行者は、例えば、北海道を周遊したあと、北海道新幹線で青森に入り、青森空港から帰国するといったルートを組むことができる。

青森県全域と道南地域で、“交流圏”を形成し、観光客の流動を促すのが「立体観光」の狙いです。

ただし、「立体観光」を成立させるには、インバウンドを支える“上得意客”、すなわち中国からの観光客に青森空港を利用してもらう必要がありました。

16年の中国人の訪日観光客数は637万人。訪日観光客全体の26.5%を占めます。
中国便の就航は「立体観光」の絶対条件でした。

青森県は16年度、定期路線就航対策に1億3335万円を計上しました。そして、三村知事は、定期便就航に向けた交渉に、自ら足を運んだんですね。トップセールスです。三村知事は、とにかく行動の人です。

取り組みの結果、念願の中国便の定期就航がとうとう実現したんですね。

中国の奥凱航空(Okay Airways)は5月7日、青森・天津線を就航させました。運航曜日は水、日の週2便で、10月28日までの運行ですが、冬のスケジュールについても今後、改めて決定される予定です。

知恵こそ地方の活力。青森県が打ち出した「立体観光」は、地方活性化の成功事例の一つといえます。

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