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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ソニーの完全復活の条件

ソニーは今日、2017年度の経営方針説明会を行いました。今年度は、15年度から3年間の「第二次中期経営計画」の最終年度です。


※ソニー経営方針説明会。社長の平井一夫さん

「いまは、社員が目を輝かせ、そして未来に向けて新しいことに挑戦する自信と元気に満ちたソニーが戻ってきた実感があります」と、会見の席上、平井さんは胸を張りましたね。

12年に平井一夫さんが社長に就任して以来、丸5年。「はや5年」というべきか、「まだ5年」というべきか。つまり、成果は出ているというべきか、いやいや、まだこれからが復活の本番というべきか……。

ソニーは第二次中計の目標として、今年度、営業利益5000億円以上、ROE10%以上を掲げています。

「この5年間の取り組みにより、十分にねらえるだけの力はついてきた」と、平井さんはコメントしました。そして、5000億円については、こう付け加えました。「通過点に過ぎず、企業として今後も持続的に発展していく必要がある」と――。

過去、ソニーが営業利益5000億円を達成したのは1997年度の1回だけです。20年ぶりに5000億円を達成すれば、一つの「成果」といえるでしょうが、問題は、その先です。実際、平井さんも話していましたが、ソニーが5000億円以上の営業利益を2年以上続けて出したことは、過去に一度もありませんからね。

18年度以降も5000億円以上を稼ぐ企業であるために、平井さんは、三つのポイントをあげました。①感動を提供するラストワンインチ、②リカーリング型ビジネスモデルの強化、③多様性と新しい事業への挑戦――です。

なかでも注目が、②のリカーリング型ビジネスモデルの強化です。第二次中計以降、平井さんが注力してきた一つで、収益を安定させるための策ですね。

ソニーの基盤であるコンスーマーエレクトロニクス事業は、B2Cビジネスで、商品サイクルが短い。「売り切り型」の商品で安定して収益をあげようとすれば、世界中に商品を提供しつつ、つねに新しい商品を育て、稼ぎ頭を変化させながら、食いつないでいかなくてはいけません。

それは、簡単なことではありません。というのは、エレキ以外の安定した収益基盤として金融事業などがありますが、それだけでは、エレキやエンタテインメント事業の収益の波を、カバーすることはできないんですよね。

※ソニー発表資料より抜粋

実際、過去のソニーの連結営業利益の推移を見ると、安定していたといえる時期はほとんどありません。つねに波があります。

リカーリングとは、「繰り返し」や「循環」を意味します。つまり、リカーリング型事業とは、「売り切り型」ではなく、経常的に利益をあげられるビジネスです。15年度に35%だったリカーリング型事業の売上比率は、今年度は約40%を占める見通しです。

具体的に、ソニーのリカーリング型事業を大別すると、金融、ネットワークサービス、テレビチャンネル事業などの「サブスクリプションモデル」、デジタル一眼カメラのレンズやゲームソフトなどの「追加購入モデル」、音楽制作、テレビ番組制作などの「コンテンツ事業」の三つです。


※経営方針説明会

「今後は、サブスクリプションモデルをはじめとするお客様と直接つながるサービスモデルの将来性がとくに高い。リカーリング型事業の強化により、各事業の収益モデルを安定させ、持続的に高収益を生み出すことで、新しい価値を創出し、将来へとつなげていくことができる」と、平井さんは強調しました。

ソニーが今期に限らず、18年度以降も5000億円を達成すれば、それこそ平井改革の大きな「成果」です。「リカーリング型事業」の強化が、そのカギを握るのは、間違いありません。

復活のプロセスに入っているのは、確かです。でも、完全復活するためには、当然のことながら、あくなき利益追求が今後も求められますよね。つまり、「まだ5年」です――。

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