Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

スカイツリーは東京のシンボルになったか?

東京スカイツリーが、2012年5月22日に開業してから5年が経ちました。今年3月までに、スカイツリー約2600万人、併設の商業施設の東京ソラマチを含むスカイツリータウン全体で約1億8000万人が訪れたといいます。


※公開前の東京スカイツリー(2011年10月30日撮影)

東京スカイツリーの建設が本格化した2010年以降、私は、拙著『東京スカイツリー六三四に挑む』(小学館)の執筆のために、建設現場を始め、設計やデザイン、鋼管製作、エレベーター、鉄骨加工など、さまざまな現場に足を運びました。

634mという世界一の電波塔の建設は、「未知への挑戦」だった。あらゆる分野に、さまざまな職人の技や最新の技術が詰め込まれていて、大変刺激的でしたね。

5周年を記念して、運営を手掛ける東武鉄道はさまざまなイベントを行いましたが、その一つが、新しいライティングだと思います。従来の紫を基調とした「雅」と、水色を基調とした「粋」の2パターンに、「幟(のぼり)」が加わった。夜空に大きな「幟」を掲げ、東京全体を盛り上げていくイメージといい、縁起が良いとされる「橘(たちばな)色」を基調としたデザインです。

いまでこそLED照明による建築物のライティングは珍しくありませんが、12年当時、スカイツリーの照明をオールLED化することは、ほとんど不可能といわれていました。実際、照明器具を手掛けるパナソニックの技術者を取材した際、「最初のオールLED化の話を聞いたときは、正直、何をいっているのかと思いました」と話したものです。

当時のLED照明は、一般的だったHIDに比べて暗かった。光を遠くまで、かつピンポイントで飛ばす「超狭角配光」の技術や、照明器具の熱を逃がす「放熱設計」の技術、高精度に色彩を再現する技術など、デザイナーとパナソニックは、オールLED化のために、さまざまな技術を開発したんですね。


※建設中のスカイツリーの展望回廊(2011年10月30日撮影)

スカイツリーは、じつは、開業後も「未知」に挑戦してきたんですね。

というのは、強風によってエレベーターが運休する日が相次いだのです。予約しても、天候不順で登れない可能性があることなどから、ツアーのコースに組み込むことを敬遠されるなど来場者数の伸び悩みが指摘されていた。

そこで、15年以降、エレベーターの改修工事を進めてきました。地上から高さ350mの展望台までを結ぶ4基のエレベーターのうち、3基を順次改修。エレベーターを引っ張るロープの強度をあげ、おもりをつけることによって揺れを防ぎました。3基目の工事が昨年秋に終わり、改修前に年間33日だった運休日は、17年3月期は0でした。

そういえば、スカイツリー開業で来場者減が心配された東京タワーは、開業から59年を経た今日も、イベント開催に注力したり、インバウンド向けインフォメーションセンターの設置などによって、年間200万人以上が訪れる根強い人気といいます。

当たり前のことですが、持続的な集客には、努力が求められます。今後、スカイツリーが「東京のシンボル」として定着するためには、エレベーター改修のように、つねにサービスの質を高めていく努力が欠かせないということです。

ページトップへ