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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日産は「プロパイロット」で快走するか

日産がこのところ元気です。その背景には、何があるのでしょうか。

日産は先週8日、多目的スポーツ車(SUV)の「エクストレイル」をマイナーチェンジして発売しました。

目玉は、昨年8月に発売したミニバン「セレナ」に初搭載した、高速道路の同一車線上で自動運転が可能な技術「プロパイロット」をオプションで追加可能にしたことです。


※プレゼンする星野朝子さん

登壇した日産専務執行役員の星野朝子さんは、
「『プロパイロット』は、昨年、新型セレナに初搭載し、昨今の自動車業界の自動運転の火付け役になった、日産自慢の技術です。そして、多くのお客様から高い評価をいただいています」と、コメントしました。

直近、日産の経営には勢いがありますが、背景として、大きく二つのポイントをあげたいと思います。

一つは、技術戦略の“先見の明”ですね。

日産は、2010年に世界初のEV量産車として「日産リーフ」を発売しました。当初、売り上げ台数は想定通りに伸びず、ワルグチをいわれ続けた。しかし、世界の自動車市場が一気にEV化に向けて加速しているいま、“先見の明”だったといえるようになりました。トヨタやホンダが、EVへの遅れを必死で取り戻そうとしているのとは、対照的です。

さらに、2016年以降、「日産・インテリジェント・モビリティ」を掲げ、EVに加え、自動運転に注力してきた。国内各社が「自動運転」という言葉を使うことに及び腰のなか、昨年夏、「プロパイロット」について、「高速道路の単一車線での“自動運転技術”」と明確に謳い、ミニバンクラスは世界初として「セレナ」への搭載に踏み切りました。

そう、もう一つのポイントは、“マーケティング戦略”ですね。

「自動運転」という言葉を使えば、消費者の誤解を招き、反発につながるリスクがありました。しかし、日産はそのリスクを負ってでも「先進性」を訴えることに賭けた。「セレナ」の市場の評価は上々で、ここまで「プロパイロット」が人命にかかわるような問題は、起きていない。だからこそ、今回「エクストレイル」にも「プロパイロット」が搭載されたわけですね。


※8日に発売された新型「エクストレイル」

もっとも、ご存じの通り、米テスラをはじめ、世界の自動車メーカーは、すでに同様の自動運転技術を搭載した車を、市場投入しています。フォードは21年に完全自動運転車の量産車の投入を掲げているほか、国内では、トヨタ、ホンダが20年をメドに高速道路で車線変更ができる自動運転車を実用化するとしています。日産は、20年をメドに一般道路での条件付きの自動運転を実現するとしていて、国内ではもっとも野心的といえますね。

トヨタの「レーダークルーズコントロール」やホンダの「ホンダセンシング」など、各社はドライバーを支援する技術を市販車に搭載しているほか、自動運転技術の実証実験も重ねています。

日産の「プロパイロット」が、必ずしもとびぬけて優れた技術とは言い切れない。しかし、そのなかで、いまや日産は、自動運転においては先進的なイメージを確立することに成功しています。これは、“自動運転”という言葉を臆せずに打ち出した、日産のマーケティング戦略が功を奏しているのは間違いありません。

昨年10月に発売された「ノート e-POWER」も、“マーケティング戦略”が光った例です。エンジンで発電し、駆動にモーターを使用するシステムを、「充電を気にせず走れるEV」と謳うことについて、賛否両論ありますが、売れ行きを見れば、マーケティング戦略として成功だったことは、疑いようがありません。

さて、EVや自動運転の技術について、実力勝負になるのは、これからです。日産は、ここまでに築いたリードを、完全自動運転車時代に至るまで、守り切ることができるでしょうか。

勝負の行方は、まだまだ、わかりませんよね。

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