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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

東芝もWDを提訴でいよいよ泥沼か

東芝は28日、定時株主総会を幕張メッセで開きました。しかし、2017年3月期決算は、監査法人との調整が滞り、報告できないまま。株主への報告を予定していた、半導体メモリ事業の売却契約も間に合いませんでした。いったい、どうなっていくのでしょうか。

※東芝の株主総会会場

午前10時に始まった総会の冒頭、綱川智社長は、「本来は年度決算を報告する場ですが、手続きに時間を要しているため、報告できません。あらためて、心からお詫びしたい」と語り、役員一同、起立して頭を下げました。

ご存じのように、半導体メモリ事業の売却により、2兆円程度を手にできなければ、東芝は大変なことになります。かりにも、2018年3月末までに売却が完了しないと、東芝は上場廃止になりますよね。

ところが今日、事態は収束するどころか、一層、泥沼化することが判明した。

東芝は、官民ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行、米ファンドのベインキャピタルからなるコンソーシアムを東芝メモリの売却に係る優先交渉先に決定し、今日の株主総会までの最終合意を目ざしていました。

これに対して、三重県四日市市のメモリ工場で協業する米ウエスタンデジタル(WD)は、同意のない第三者への売却に反対し、国際仲裁裁判所と米カリフォルニア州の裁判所に差し止めを求めました。

WDは、依然として、「日米韓連合」への半導体メモリの売却に反対しています。

株主総会の席上、綱川社長は、「ウエスタンデジタル(WD)は、東芝メモリ売却の手続きに対して、看破できない妨害行為を継続的に行っています。それについては、IBD連合(産業革新機構、ベインキャピタル、日本政策投資銀行の頭文字をとった略称)にも理解してもらっています」と語りました。

東芝は、堪忍袋の緒が切れたのか、ついに株主総会が終了後、WDを相手取り、不正競争行為の差し止めなどを求めて、東京地裁に提訴しました。東芝の逆襲です。

こうなると、東芝とWDは泥沼の争いに入ります。

その一方で、東芝は、「日米韓連合」とは粛々と手続きを進める方針です。

「ウエスタンデジタルとは、かみ合った議論になっていないのが現状です。パートナーなので歩み寄れるところは歩み寄り、係争ごとはきちっとやり、早い解決を目指したいと考えています」と、株主総会の席上、綱川氏は語りました。

「係争ごとはきちっとやる」という綱川氏の発言からもわかるように、どうやら、東芝は、本気でWDと争う覚悟のようです。

問題は、東芝には時間がないことです。

3月末までに売却手続きを完了させるには、独禁法の審査などを考え、ここ1、2か月で売却先を決める必要があります。さまざまな状況をかんがみて、私は、ここ1、2か月で売却先が決まるかどうかは五分五分といったところだと見ています。

例えば、産業革新機構は、出資の条件として、WDとの係争の解決をあげています。だとすれば、売却手続きが頓挫することも考えられますよね。

東芝メモリの売却をめぐる問題は、いよいよ混沌としてきました。と同時に、東芝の再生の行方もますます見えなくなってきました。

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