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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタ「新型カムリ」が背負う重荷とは

トヨタは10日、6年ぶりに全面改良したセダン「カムリ」を国内で発売しました。低重心のスポーティーなスタイリングで若い世代にもアピールしています。果たして、「セダンの復権」はあるのでしょうか。

※新型カムリ

カムリは1980年、国内専用モデル「セリカ カムリ」として誕生。82年、FFレイアウトを採用した「カムリ」がグローバル販売されました。

米国では15年連続で乗用車販売台数ナンバーワンを獲得するヒット車に成長。いまや100か国以上の国や地域で累計1800万台以上、販売されています。

しかし、ご存じのように、ユーザーの志向は大きく変化しています。日本や北米など、主力市場の売れ筋は、いまやセダンではなく、SUV(スポーツ用多目的車)ですよね。

「もう一度、セダンを復権したい」 新型カムリの記者発表の席上、トヨタ専務役員の吉田守孝氏はコメントしました。

※専務役員の吉田さん(右)とチーフエンジニアの勝又さん

果たして、SUV人気に対抗できるのか。「セダンの復権」は可能なのか。それには、当然のことながら、すべてを一新し、新しいカムリに生まれ変わる必要がある。

乾坤一擲の車づくりに向けて、トヨタが取り組んだのは、TNGAに基づくゼロからの開発です。

これまで何度も触れてきたように、TNGAは、トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャの略で、トヨタが全社をあげて取り組むクルマづくりの構造改革です。

新型カムリは、TNGAに基づいて、プラットフォームをはじめ、パワートレーン、ユニット、電子系など、すべてを一新したんですね。

例えば、フロントシートの位置を後退させ、ヒップポイントを低く設定することにより、安定感のある走りを実感できるようにした。また、重心高を下げることにより、横揺れの少ない乗り心地と安定した走りを実現した。TNGAに基づき、エンジンも刷新した。

それに加えて、じつは、クルマづくりのすべてを一新するには、これまでの組織のあり方そのものを変える必要があった。新しいクルマづくりをしようとすると、そこまで変える必要があるということです。

これも以前、触れたように、トヨタは16年4月、カンパニー制を導入しました。車両の「機能」ごとに分けていた組織を、「製品」を軸とするカンパニー制に分散したんですね。

「機能」最適の組織のままでは、クルマづくりのすべてを一新し、新しいカムリに生まれ変わることはできない。その意味で、組織の壁を壊して、余分な調整をなくし、クルマづくりに集中できる体制をつくったことは、新型カムリをつくるうえでの助けになったのは、間違いないと思います。

「仕事のやり方が変わったことで、意思決定が早くなり、一人ひとりが情熱をもって車づくりに取り組めるようになったんですね」とは、吉田氏のコメントです。

これまでカムリは、カローラ店専売でしたが、新型カムリは、カローラ店に加えて、トヨペット店、ネッツ店でも販売されます。つまり、3チャネル、計4000店舗で販売されることになります。月販目標台数は2400台です。

アメリカでも10日から発売が開始されます。トヨタは、北米での販売目標台数として「月に3万台以上」を掲げています。

「セダンの復権」に向けて、新型カムリが背負う重荷は、想像以上に大きいといえますね。

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