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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

“V字回復”の三菱自動車に残された2つの課題

三菱自動車が信頼を回復し、ブランド力を再生できなければ、ルノー日産が進める巨大アライアンスの前途は危ういといわなければなりません。アライアンス1000万台体制を成功させるためにも、三菱自動車の再生は必須なんですね。

※三菱自動車の池谷光司副社長

燃費不正問題の公表から1年3か月。三菱自動車が25日発表した17年4-6月期の連結決算は、当期損益が前年同期1297億円の赤字から229億円の黒字へと転換しました。

「不正を再発させず、業績のV字回復で信頼を取り戻したい」という三菱自動車の益子修社長の決意は、4-6月の最終損益が黒字に転換したことで、ひとまず実を結んだといえますね。

また、燃費不正問題で落ち込んだ国内の販売台数は1万9000台となり、15年4-6月期の水準を回復しました。

「燃費不正問題の信頼回復に努めてきましたが、その成果が少しづつ出てきたということだと思います」と、25日の決算発表説明会の席上、池谷光司副社長はコメントしました。

4-6月期の“V字回復”、国内販売台数の回復は一定の成果といえます。しかし、課題はまだ残されているんですね。

一つは、世界販売台数の大幅な上積みです。

三菱自動車は、昨年10月に資本業務提携した日産自動車のもとで経営再建を進めています。三菱自動車の販売台数が戻れば、ルノー、日産、三菱自動車の3社アライアンスの販売台数は、現在の996万台から限りなく1000万台に近づく。ちなみに、現在、日産の販売台数は555万台、ルノーは348万台、三菱自動車は93万台です。

もとより、カルロス・ゴーン氏は、世界トップ3の仲間入りへの野望を抱いています。三菱自動車に課せられた役割は小さくない。とりわけ、ASEAN地域での販売増に期待を寄せているんですね。

17年4-6月期の世界販売台数は24万1000台で、前年同期の22万1000台に対して9%増えたものの、このまま順調に増やせるかどうか。また、三菱自動車は、2020年3月期に世界販売台数125万台の目標を掲げていますが、目標を達成できるかどうか。

もう一つの課題は、日産との協業をさらに深め、いっそうのシナジー効果をだすことですよね。

三菱自動車は、18年3月期に250億円のシナジー効果を見込んでいますが、4-6月期のシナジー効果は35億円にとどまっています。

それについて、池谷氏は、決算説明会の席上、次のようにコメントしました。
「社内目標としては、いいスタートが切れています。日産との提携後、月次の収益管理などを進めているほか、購買分野を中心にかなりシナジーを発揮できています。第2四半期以降もこの体制で進めていきます」

18年3月期に250億円のシナジー効果をだすためには、部品の共同購買や物流以外で、どれだけ日産との協業を深めていくかがカギとなります。プラットホームの共通化や工場の共有化などを進め、どれだけコスト低減を進められるか。それにはもう少し時間がかかるでしょう。

ご存じのように、ルノーと日産は、独立したブランドをもちながらも、生産や購買、開発など主要機能の統合を進め、あたかも一つの会社であるかのようにアライアンス経営を進めています。

三菱自動車がルノー日産アライアンスの一員として、アライアンスの発展に貢献できるようになるのは、いつの日か。

日産の傘下入りから9か月。早くも“V字回復”を遂げたとはいえ、ゴールはまだ先といえるでしょうね。

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