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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

「シビック」はホンダのイメージを変えられるか

国内市場に、「シビック」が帰ってきます。一部の限定販売を除いては国内では約6年ぶりの復活です。9月29日から発売されるんですね。


※「シビック」タイプRと、執行役員日本本部長の寺谷公良さん(右)、開発責任者の松本英樹さん

国内で発売されるのは、セダン、ハッチバックに加え、スポーツモデルのタイプRの3タイプです。もっとも、世界では、すでに多くの市場で新型「シビック」は投入済みなんですね。2015年11月の北米を皮切りに、中国、ヨーロッパ、アジアや南米市場にも、昨年までに順次投入されています。

私は、出張中の米ワシントンで、ピカピカの新型「シビック」が走っているのを見ました。目だっていましたよね。

「シビック」の国内販売は途切れていましたが、海外市場では、「シビック」はホンダの主力車であり続けていて、いまも稼ぎ頭です。「シビック」セダンは、2016年に北米「カーオブザイヤー」を受賞した、お墨付きのセダンですね。

歴史を振り返ると、「シビック」は、45年前の1972年に登場しました。小型で燃費がいいという日本車のイメージを、米国に植え付けるきっかけとなったクルマです。「大きければよし」という米国のクルマに対する価値観に、一石を投じたんですよね。

昨年、ホンダは四輪車の世界累計販売台数が1億台を超えました。うち、「シビック」は、今年5月時点で約2420万台といいますから、ホンダが世界中で売った車のうち、ほぼ4台に1台が「シビック」です。まさにホンダを代表するクルマですよね。

余談ですが、ホンダジェットも「シビック」をモデルにし、「シビックに翼をつけたようなクルマ」という構想からスタートしました。もっとも、「シビック」は、改良を重ねるごとにサイズも車格もアップし、10代目となったいまでは、ずいぶん立派なクルマになった印象です。

さて、その「シビック」は、11年3月に国内での販売をいったん終了した。9代目は一部の限定販売を除いて国内販売されなかったんです。国内の自動車市場は、ミニバンや小型車、軽自動車の人気の高まりとともに、「シビック」の販売台数は激減していたのです。

結果、どうなったか。ホンダのイメージは、ますます軽とミニバンになった。「N-BOX」をはじめとするNシリーズや「フィット」、そして「ステップワゴン」などですよね。走りや操作性を追求する「NSX」や「S660」に代表される、いわゆる「ホンダらしい」クルマのイメージは、とくに若者の間で薄れてしまった。

執行役員日本本部長の寺谷公良さんは、「ホンダらしい個性を際立たせたい」と強調しました。つまり、「シビック」は、ホンダのブランドイメージの再構築を担っているんですね。

価格は、セダン265万320円、ハッチバック280万440円、タイプR450万360円です。前モデルよりは高いですが、若者の手が届かない額ではありませんね。

月販の目標は、2000台。先行受注約6300台のうち、ハッチバックが50%、セダンとタイプRが25%ずつ。そしてハッチバックの35%がMT(マニュアルトランスミッション)車といいます。自動運転や燃費など実用性を重視する傾向の一方で、やはり、クルマを操る喜びを求める人々は、少なからずいるという証拠です。

ホンダブランドの評価は、もともと国内より海外で高い。さて、「シビック」は、国内のホンダブランドを再構築できるのか。戻ってきた「シビック」の真価が問われているといっていいでしょう。

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