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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

東京モーターショーに見る部品メーカー競争

2年に一度のクルマの祭典、東京モーターショーが28日から一般公開されます。完成車メーカーは、EV(電気自動車)や自動運転などの分野で先端技術をアピールしていますが、その一方で、自動車の競争力の源泉となる自動車部品メーカーの展示も見逃せませんよね。

※デンソーの有馬浩二社長

「世界の自動車産業は、電動化や自動運転の実現スピードが加速しています」
大手自動車部品メーカー、デンソーの有馬浩二社長は10月26日、東京モーターショーの会場で開かれたプレスブリーフィングの席上、そのように語りました。

デンソーは、自動車メーカーが電動化と自動運転の開発を加速させていることを受けて、両分野の研究開発に2020年までの3年間で約5000億円を投資することを明らかにしました。

ご存じのように、自動車業界はこれまで、完成車メーカーを頂点にティア1、ティア2といったピラミッド型の「系列」がつくられてきました。

ところが、電動化や自動運転の流れは、これまでのピラミッド型の「系列」構造を大きく変えつつあります。開発の表舞台に立つのは、いまや部品メーカーです。

つまり、電動化や自動化は、部品メーカーにこれまでにないチャンスをもたらしています。

加えて、IT界の巨人アップルやグーグルなど、自動車産業以外からの参入の例をあげるまでもなく、その裾野を大きく広げています。

デンソーが3年間で約5000億円の巨額投資を表明したのは、この波に乗って大きな成果を手にしようと考えているからにほかなりません。

ただし、このチャンスを虎視眈々と狙っているのは、日本の部品メーカーだけではないんですね。

例えば、独ボッシュやコンチネンタルなどメガサプライヤーといわれる外資大手の部品メーカーは、すでに日本市場に強い関心を寄せています。

今回の東京モーターショーの会場においても、ボッシュやコンチネンタルのほか、シェフラーやマーレなど海外部品メーカーの展示が目を引きました。

ボッシュの展示の一例は、車線内の自車位置を数センチの精度で把握できる高精度マップです。


※ボッシュモビリティソリューションズ事業部門長のロルフ・ブーランダー氏(写真左)

「車両のレーダーから得たデータをボッシュのクラウド上で加工し、マップを作製するパートナー企業のクラウドと連携して、自動運転に使用できる非常に高精度なマップを作製しています」と、ボッシュ取締役会メンバーでモビリティソリューションズ事業部門長のロルフ・ブーランダー氏は、東京モーターショーのブレスブリーフィングで語りました。

ボッシュは現在、北米、欧州、中国において、主要なマッププロバイダーと提携し、自動運転用の高精度マップを開発しています。日本では、パイオニアの子会社のインクリメントP社と協業しています。

このように、ドイツの部品メーカーが世界に拠点を広げ、事業を拡大しているのに対して、日本の部品メーカーはどうか。

振り返ってみれば、デンソーは、トヨタの新型「カローラ」の自動ブレーキシステムの受注をドイツのコンチネンタルに奪われましたよね。

先日、豊田市のトヨタ本社にいく機会があったのですが、その際、お隣りのトヨタテクニカルセンターから、揃いのユニホームを着たコンチネンタルのエンジニアたちが出てくるのに出会いました。

それほど、海外の部品メーカーは日本に深く根を下ろしているということですね。

それに対して、日本の自動車部品メーカーはどうか。果たして、電動化や自動運転の波に乗って、果実を手に入れられるのかどうか。

「系列」を超えた展開だけでなく、国境を越えた積極的な攻勢が求められるのはいうまでもないでしょうね。

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