Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

「アイボ」は、ソニーの”宝”だ!

昨日の11月1日は、ワン、ワン、ワン……の日です。つまり、ソニーの新型の家庭用犬型ロボット「アイボ」の発売日でした。記者会見の発表時間も午前11時という念の入れようです。会見場では記者会見が始まる前からワン、ワン、ワン……という犬の“鳴き声”すなわち、「アイボ」の鳴き声が流れていましたね。ちなみに「アイボ」の先行予約も、午後11時1分からでしたよ。それから発売も来年1月11日です。

記者会見に登場したソニー社長、平井一夫さんが「アイボ、おいで……」と呼ぶと、舞台下手から可愛らしい新型「アイボ」三匹がシッポを振って、平井さんの元に歩み寄りました。そんな風に、ずいぶん凝った演出で記者会見はスタートしました。まあ、それだけ、ソニーは新型「アイボ」の発売に力を入れていたということですね。ソニーの“宝”ですからね。

ソニーは1999年に発売した「アイボ」を2006年に販売中止しました。業績が悪化したからです。その「アイボ」を今回、新装新たに再発売したわけですが、それは足元の業績がよくなったからですね。前日の10月31日の発表によると、2018年3月期の連結営業利益は6300億円の見通しで、20年ぶりに最高益を更新すると、ソニー副社長の吉田憲一郎さんは述べました。半導体とゲームの好調が背景にあります。

「問題は、未来に向けて成長できるか」だと、吉田さんは気を引き締めていましたが、ソニーの業績は昨年から好調に推移しています。この発売を受けて、昨日、ソニーの株価は500円以上値上がりしました。

そんな足元の好業績を背に、満を持して、ソニーブランドの象徴でもあった「アイボ」を復活させたのは、平井さんのヒットといえるでしょうね。むろん、まだまだ「完全復活」とはいきませんが、ソニーが元気を回復しつつあることは間違いないでしょう。

新型「アイボ」は、愛らしさを表現するため、先鋭なデザインだった先代に比べて、ずいぶん全体に丸っこくなりましたね。特徴は、①愛らしさのほか、②知的認識③表現力④学習能力――において格段に進歩したことです。

「アイボ」にはAI(人工知能)が搭載されているんですね。ですから、知的認識、表現力、学習能力が進化したんです。「アイボ」はカメラの“目”を持っていて、網膜に当たる部分が有機ELなんです。したがって、オーナーを見分けることができます。例えば、カメラに映った顔の表情や、センサーによって感知した情報、AIによって解析し、オーナーが喜んでくれる行動を学んでいきます。結果、オーナーに対して能動的にシッポを振るし、体でよろこびを表現することもできるんですね。

つまり、人間とコミュニケーションを図ることが可能です。オーナーとの交流の仕方などを通して、一匹一匹の“個体”として独自の成長をするという、すぐれものです。

この「アイボ」は将来、ペットもさることながら、パーソナルアシスタントとして、教育、見守りなど新たな機能の進展が考えられます。

私がちょっと残念に思ったのは、この「アイボ」は喋らないことです。開発に携わったソニー執行役員の川西泉さんは、「開発チーム内でも、この『アイボ』を喋らせるかどうかについて、ずいぶん議論しましたが、最終的に喋らせないことにしました」と話しました。むろん、喋らせることは、今日、必ずしも難しいこととは思えません。が、あえて、家庭用犬型ロボットに徹するというわけですね。

たぶんソニーは、この家庭用犬型ロボットをテコに、まったく新しいコミュニケーションロボットの開発を考えているのではないでしょうか。例えば、グーグルやアマゾンが発表している喋るAIスピーカーの先を目指しているのではないでしょうか。

新型「アイボ」は、ソニーの反転攻勢の第一歩とみていいですね。

ページトップへ