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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタとパナソニックの提携、両社の魂胆は?

昨日、トヨタとパナソニックは、車載用角形電池事業の協業を検討すると発表しました。日本を代表する自動車メーカーと電機メーカーが手を組み、急激に押し寄せる世界的なEV化のうねりに対応しようということですね。


※トヨタ社長の豊田章男さん(左)と、パナソニック社長の津賀一宏さん

ご存じのように、英仏中印をはじめ、世界各国で規制が強まり、EV化が加速しています。もちろん、急激に変わるといっても、EVをはじめとする電動車両の比率は、現状、自動車市場全体から見れば微々たるものです。2、3年のうちに、世界中のガソリン車がみんなEVになるという話ではありません。

しかし、トヨタにとっては、当初の想定以上に世界のEV化は早く進んでいるのは確かなんですね。

トヨタ社長の豊田章男さんは、会見の席上、次のように発言しました。
「自動車メーカーが守らなければならないルールは二つあります。ZEV規制と燃費規制です。ZEV規制には、EVとFCV、燃費規制にはHVとPHVで対応していこうと思っています。昨今、ZEVが非常に話題になっていますが、燃費規制の対応のほうが、台数規模では圧倒的に大きな規模だと認識しています。トヨタが長年HVをやってきたということ、そして電動車両のフルラインメーカーであることは優位性だと思っています」

昨年末以降、トヨタは、EV事業企画室を立ち上げたり、マツダやデンソーとEV開発会社の「EV C.A.スピリット」を設立したりと、EV化に本気で対応する姿勢を示しています。パナソニックとの提携は、これらのEV対策の延長線上といえます。

一方、パナソニックは、車載用リチウムイオン電池市場では世界シェアトップですよね。HV車用の電池では、トヨタとすでに協業しています。

また、米国のEVベンチャー・テスラと、米ネバダ州に巨大な電池工場ギガファクトリーを建設し、総投資額6000億円のうち2000億円を負担しています。現状パナソニックは、テスラに対し、円筒形の車載用電池を独占供給していますからね。

しかし、この巨額投資は、大きなリスクでもあります。「テスラ一本足打法」「テスラ依存」という指摘が、これまでずっとつきまとってきたんですね。

今回、パナソニックは、トヨタと提携することによって、「テスラ依存」の批判をかわすことができるわけです。

章男さんは、「2030年ごろには、全販売台数の50%くらいを電動車両にしたい。EV、FCVが100万台、HVとPHVが450万台、合計550万台の電動車を販売するイメージと考えています。電動車両のフルラインメーカーとして、車載用電池の性能アップと安定供給が必要不可欠であると思っています」と語りました。

トヨタの電動車両550万台は、現状の電動車両の販売台数の3倍をこえる数字であり、かなり高い目標です。トヨタの本気は、パナソニックにとっては、これ以上ない後ろ盾なんですね。

車載用電池のいちばんの課題は、性能もさることながら、コストです。大量生産によってコスト削減を図ることが必須なんですね。その意味で、パナにとって電池のビジネスは、半導体やテレビのビジネスと同じで、やるなら世界シェアトップを目指して突っ込まないといけない。それができないなら、手を出さないほうがいいんですよね。

席上、パナソニック社長の津賀一宏さんは、次のように語りました。
「2030年に550万台とは、相当なチャレンジを覚悟されているとひしひしと伝わってきます。このチャレンジに、われわれがひるむということは、まったくありません。何としてでも、お金、人材などさまざまな面で優先順位をあげながら、トヨタさんの思いを信じていきたい」

津賀さんは、パナソニックが車載用電池市場のトップであり続けるために、いよいよアクセル全開といったところでしょうかね。

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