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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

利益5兆円を超えるサムスンのトップは有罪か、無罪か

サムスングループの事実上のトップで、オーナー家3代目のサムスン電子副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)氏の控訴審判決が、来月5日に言い渡されます。実刑なのか。執行猶予付き判決なのか。無罪なのか。サムスンにとって「運命の日」となるのは間違いなさそうですね。

※ソウルのサムスンタウン

李在鎔副会長は、朴槿恵(パク・クネ)前韓国大統領とその友人、崔順実(チェ・スンシル)氏への贈賄罪などに問われ、一審で懲役5年の判決を受け、控訴していました。12月27日、ソウル高裁で開かれた論告求刑公判では、検察側が一審と同じ懲役12年を求刑し、結審しました。

では、2月5日の控訴審判決はどうなるか。朴前大統領を有罪にするためにも、李在鎔副会長の有罪は免れないだろうといわれています。

さて、当の李副会長は2017年2月17日の逮捕以来、いまなおソウル拘置所に収監されています。ところが、経営の司令塔が不在にもかかわらず、驚くべきことに、サムスンの業績はいたってどころか、超好調なんですね。

9日に発表された2017年12月期連結業績の速報値では、営業利益が日本円換算で、じつに5兆円を超えたことが明らかにされています。トヨタの2倍以上です。

稼ぎ頭は、スマートフォン向けDRAMやフラッシュメモリーが好調な半導体事業です。米調査会社ガートナーは2018年1月4日、半導体の売上高でサムスン電子が米インテルを抜いて世界一に浮上したと発表しました。

半導体事業は今後も、自動運転などに向けた積極投資が功を奏し、圧倒的な強みを見せることが予想されます。

なぜ、トップ逮捕という異常事態においても、サムスンは好調なのか。集団指導体制により、各グループ会社の社長に大幅に権限委譲がなされているからなんですね。

経営の方向性を決めるのは、李在鎔副会長ですが、事業を運営するのは、あくまでも各グループ会社の社長です。すなわち、マネジメントとオペレーションが、明確に役割分担されている。だから、トップ逮捕という事態を迎えても、事業が回っていくわけですね。

ただし、問題がないわけではありません。オーナー不在に加えて、半世紀以上にわたって、グループの司令塔とされてきた「未来戦略室」が解体に追い込まれていることです。

「ここ1、2年は大丈夫だと思いますが、問題はその先ですね」と、事情通はいいます。

というのは、5兆円を超える利益は、「未来戦略室」による戦略投資の結果であり、肝心の「未来戦略室」がない今日、新たな投資判断を誰がするのか。

とにかく、サムスンが手掛ける半導体事業は、競争が激しく、決断の遅れが命取りになりかねません。ましてや、中国メーカーの追い上げもありますね。であるからには、新たな成長分野を見つける必要があります。果たして、「未来戦略室」なくして、サムスンは新しい投資判断ができるのか。

実際、集団指導体制のもとで、オペレーション&マネジメントはそれなりに回っていくことでしょう。しかし、今後、サムスンは新しいビジネスを創造すべく、1兆円を超えるような巨額の投資を決断することが必要になると思われますが、それがいまの体制でできるのか。

多分、サラリーマン出身のいまの経営陣ではそれは無理でしょう。つまり、そこまでのリスクはとれないでしょう。そこに不安があります。

かりにも、李在鎔副会長が判決で重い量刑を受け、長期の拘束という事態になれば、サムスンの経営に影を落とす可能性は避けられませんね。

トップ不在でサムスンの経営に問題が生じれば、一企業の問題では済まされません。当然、韓国経済にも悪影響が出ることが予想されます。

李在鎔氏は、実刑なのか。執行猶予付き判決なのか。無罪なのか。いずれにしても、2月5日、サムスンは「運命の日」を迎えることになります。

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