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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ソニー平井社長の鮮やかすぎる引き際

ソニーのトップが変わります。爽やかな交代劇といっていいでしょう。これまでの交代劇は、OBが口を出すなど、ドロドロしていましたからね。


※ソニーの平井一夫氏(写真左)と吉田憲一郎氏

ソニーは2日、吉田憲一郎副社長兼最高財務責任者(CFO)が4月1日付で社長兼最高経営責任者(CEO)に昇格する人事を発表しました。平井一夫氏は、代表権のない会長に就任。最高戦略責任者(CSO)を務めてきた十時裕樹氏は、CFOに就任します。

平井氏は2012年に社長に就き、主力のテレビ事業などの不振で、4年連続の最終赤字に陥っていたソニーの構造改革を進めました。

1万人の人員削減、パソコン事業の売却などの痛みを伴う構造改革のほか、テレビ事業の「売り上げ至上主義」脱却を進め、エレクトロニクス事業は16年3月期、5年ぶりに黒字を達成したんですね。

ゲーム事業やイメージセンサーなど高収益事業も育ち、今期は過去最高益を更新すると見込まれています。

“平井改革”の成功の背景には、13年末、ソネットにいた吉田憲一郎氏をマネジメントチームに引き入れたことがあります。翌14年4月、平井氏は吉田氏を代表執行役CFOに起用しましたが、このことがソニー再生のうえで大きかったといっていいでしょう。

実際、吉田氏はCFOに就任して以降、ソニーの財務基盤をしっかり立て直しました。結果、経営が落ち着きました。財務畑の吉田氏は、チーム平井のサポート役になって、不採算事業を整理し、V字回復を牽引したことは間違いないでしょう。

「新しい中期経営計画がはじまるこのタイミングで、新しい経営体制にバトンタッチすることが今後のソニーにとって、また私自身の人生においても、適切であると考え、社長兼CEOの退任を決断しました」と、2日、都内で開かれた記者会見の冒頭、平井一夫氏は述べました。

平井氏は4月以降、代表権のない会長に就任します。鮮やかな引き際といっていいでしょう。

「経営トップは吉田新社長です。私はエンターテインメントやゲーム、ネットワークサービスを中心に色々なアドバイスをしていきます。国内外で様々な会議やイベントがありますが、要請があれば参加します。あくまでも新社長を補佐する役割です」と、平井氏はコメントしました。

それにしても、吉田氏は、これまでのソニーの社長とはタイプが異なりますね。個性的で明るくて豪快なこれまでの歴代社長に対して、吉田氏は、財務畑出身なだけに、どちらかというと、地味な印象です。

平井氏を“動”のリーダーとするなら、吉田氏は“静”のリーダーといったらいいでしょうか。

ただ、記者会見におけるこれまでの発言を聞く限り、吉田氏ははっきりものをいう人ですね。ハッタリをかます人ではない。誠実な人柄がにじみ出ていて、じつに説明がわかりやすいんですね。アナリストたちのウケがいいのもわかりますね。

吉田氏は、いったい、どんな社長になるのか。

これまでは、CFOとしての立場でしか発言できなかったわけですが、4月以降は、ソニーを率いるトップとなるわけですから、誠実さだけではもの足りない。リーダーとしてハッキリしたメッセージを出さなければいけない。

4月から始まる新しい中期経営計画で、吉田新社長はどんなリーダーシップを発揮するのか。

「バランスシートの改善は緒に就いたばかりです。世界の時価総額の上位企業はテクノロジーの会社が多いですが、そこでソニーはどう戦っていくか。危機感をもっています」
と、吉田氏は記者会見の席上、語りました。

新しい中期経営計画は、これまでの6年を引き継いだ形になると見られていますが、ソニーの新たな成長戦略をどう描いていくのか。どんなメッセージを発するのか。吉田氏の手腕が試されますね。

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