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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

マツダは小規模ゆえの強みを発揮できるか

自動車市場の世界一の座をめぐって、1000万台の戦いが注目を集めていますが、強いのは必ずしも「巨人」だけではありません。小規模ならではの強みを発揮しているのが、マツダです。


※マツダ常務執行役員の藤本哲也氏

マツダは7日、2017年4~12月期の連結決算を発表しました。売上高は前年同期比8%増の2兆5479億円、営業利益は5%増の1071億円、純利益は6%増の849億円でした。グローバル販売台数は、118万6000台と過去最高でした。

「グローバル販売台数は、対前年で年2%の増加の118万6000台と過去最高の販売実績でした。新型CX-5のグローバル展開による販売貢献に加えて、好調な中国が台数成長を牽引しました」と、決算会見の席上、常務執行役員で財務担当の藤本哲也氏はコメントしました。

近年のマツダの業績を見てみると、13年3月期以降、5年連続で黒字が続いています。グローバル販売台数も順調に増え続けています。いったい、なぜなのか。

グローバル販売台数120万台の小規模メーカーがトップ企業と同じことをしていては競争に勝てないと、マツダが小規模メーカーならではの強みを磨いてきたからにほかなりませんね。

クルマの走りを徹底追及した「スカイアクティブ・テクノロジー」、独自のデザイン思想「鼓動デザイン」、クルマづくりのプロセスをゼロから見直した「モノづくり革新」など、マツダには自動車メーカーの「巨人」たちとは異なる競争力があります。

規模を追いかけることで、とかく個性を失いがちな「巨人」メーカーにとって、小規模メーカー故のマツダ強みは、今後の生き残りの重要なカギになります。

量産型EVの開発では、17年9月、トヨタ、マツダ、デンソーの3社がEV(電気自動車)の基幹技術を共同開発する新会社「EVシー・エー・スピリット」を設立しました。トヨタは、マツダの開発手法を学びたいと考えているといわれます。

また、17年10月、マツダとトヨタは、互いに500億円を出資し、資本提携しました。その柱の一つが、21年稼働予定の米国のアラバマ州の新工場です。トヨタは「カローラ」を、マツダは多目的スポーツ車(SUV)を、それぞれ年間15万台生産します。

「マツダの持つ小型車の効率生産の手法を取り入れて、世界一効率のいい工場をつくります」と、決算会見の席上、財務本部副本部長兼財務企画部長の亀村直樹氏は語りました。

小規模ゆえの弱点は、ここにあるといっていいでしょう。

米国の新車販売が計画通り進めば問題ないのですが、すでに米国の全需は1700万台からピークアウトし、先行き不透明な展開を見せ始めていますよね。

実際、マツダの4~12月期の米国の販売台数は、5%減の22万台にとどまっています。

「米国の台数減少には、危機感を感じています」
と、常務執行役員の青山裕大氏は語りました。

こうなると、500億円の相互出資はマツダにとって重荷になってくるのではないでしょうか。実際、第3四半期のキャッシュフローの赤字は、500億円でトヨタ株0.25%を取得したことが効いていると見られています。

「もともと米国で収益を出すのが、マツダです。積み重ねた施策のもとに、質的成長をきっちりやっていきます」と、青山氏はコメントしました。

マツダとトヨタが共同出資で建設する米国のアラバマ新工場は、トヨタにとっても今後の米国の自動車販売台数の先行きが見えないだけに懸案となりそうですが、あえていうならば、トヨタ以上に、マツダにとっては大きな課題となりそうですね。

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