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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

西川自工会会長が訴える自動運転のルールづくり

自動運転には、交通事故ゼロ、高齢者の移動の確保など、さまざまな社会的意義があります。しかしながら、その実現には、技術的課題のほかにも、いくつか乗り越えなければいけない問題があるのも確かなんですね。

日本自動車工業会の西川廣人会長は15日、会長職をつとめたこの2年間を振り返り、「(前任の)池さん(本田技研工業元代表取締役会長の池史彦氏)からの引継ぎ直後は、課題を共有してきましたが、その後の2年間は、本当にいろいろなことがありました」と語りました。

※日本自動車工業会の西川廣人会長(写真右)

実際、2016年5月、西川氏が自工会会長に就任して以降、英国のEU離脱問題、トランプ政権の発足、米国のTPP離脱など、日本の自動車業界を揺るがす出来事が多くありました。

そうしたなか、西川氏が自工会を代表して訴えつづけてきたことの一つに、自動運転をはじめとする日本の先進技術があります。

「東京モーターショーをステップとして、日本の自動車技術の先進性をアピールしてきました」と、15日に開かれた自工会の記者会見の席上、西川氏は述べました。

ご存じのように、日本の自動車メーカーはいま、「100年に一度の大変革」にこれまでの常識を捨てる覚悟で立ち向かっています。

ところが、自動運転など先進技術を普及させるには、自動車メーカーだけでは解決できないさまざま課題があり、政府の協力が不可欠なんですね。

例えば、ルール整備です。自動運転が進化すれば、最後は完全自動運転になり、ドライバーはいらなくなります。ところが、日本では、クルマの運転に関して、警察庁の所管する「道路交通法(道交法)」で基本が定められており、無人運転は想定されていないんですね。

西川氏は、17年9月21日に開かれた定例記者会見の席上、自動運転を普及させるには、これまでとは次元の異なるルールの策定を急ぐことが不可欠だとして、政府や関係省庁などに、次のように要望を述べました。

「2020年の自動運転の実施に向けては、交通ルールやインフラ整備を要望しています。オールジャパンで将来のモビリティ社会に向けた技術開発と交通システムが加速するように一層の支援をお願いしたいと思います」

もう一つ、重要なのが、自動運転に対する社会的コンセンサスです。早い話が、無人運転車が市街地を走りまわっていたら、人々はどう考えるか。危ないと思うか。大丈夫だと思うか。すなわち、自動運転の普及は、自動運転に対する社会の受容が大前提になるんですね。

すでに、神奈川県藤沢市、宮城県仙台市、愛知県豊田市、秋田県仙北市など、国家戦略特区では、自動運転の実証実験が進められていますが、自動運転が社会に受容されるためには、一般道で走行テストを重ね、自動運転車が公道を安全に走行できるということを、一般の人に見てもらう必要があります。

また、一般の人に自動運転車の使い勝手を体験してもらいながら、課題を洗い出し、改良を重ねることが重要になってきます。

日産自動車とディー・エヌ・エーは、3月5日から18日まで、横浜市みなとみらい地区で、無人運転車を使った交通サービス「イージーライド」の実証実験を、一般公募で選ばれた300人を巻き込んで行いました。


※イージーライド

日本の自動運転技術が海外と渡り合えるかどうか。それには、思い切った規制緩和を行い、リスクをとって自動運転に関わる産業振興を図ることが重要です。

「自動車業界として期待を寄せているのは、政府が5月をメドにまとめる『自動運転に係る制度整備大綱』です」と、15日に開かれた定例記者会見の席上、西川氏は述べました。

政府は、実際に自動運転車を公道で走行させるにあたり、法制度上何が問題でどのような見直しが必要なのかを検討し、その制度整備の方針を「自動運転に係る制度整備大綱」としてまとめ、19年の通常国会に提出する計画です。

日本の自動車メーカーの国際競争力を引き上げるためにも、自動運転のルール整備は欠かせない取り組みといえます。

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