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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタ、水素社会へ一歩

トヨタは、再生可能エネルギーを使ってつくった水素を、工場内で使うFC(燃料電池)フォークリフトに使う取り組みを始めました。


※燃料電池フォークリフトの前で手を組む関係者ら
愛知県、知多市、豊田市、中部電力、東邦ガス、トヨタ自動車、豊田自動織機は、「あいち低炭素水素サプライチェーン2030年ビジョン」とそのロードマップを取りまとめたんですね。25日に発表しました。

東京工業大学特命教授の岡崎健さんら学識経験者、企業、行政、中部経済産業局などのオブザーバー、愛知県環境部地球温暖化対策課の事務局と、多方面が連携して進めます。

「水素社会実現の必要性があるのかないのか。水素社会実現により、世の中はもっと良くなるのかという、多くの議論を積み重ね、水素社会は必要だという結論に至りました」
トヨタ自動車会長の内山田竹志さんは、そうコメントしました。理由として、水素は使用中にCO2が出ないこと、地産地消に適することなどをあげました。

具体的には、どのような取り組みなのでしょうか。
①知多市南部浄化センターで下水汚泥処理によってバイオガスが発生
②東邦ガスは、バイオガスを買い取り、これを原料として都市ガスを製造

③既存の都市ガス導管網を通じてトヨタ自動車の元町工場へ輸送

④トヨタは元町工場に設置したガス改質装置で低炭素水素を、圧縮、貯蔵し、工場内で使用する豊田自動織機製のFCフォークリフトで利用する

さらに、バイオガスが不足した場合、都市ガスを改質する際に発生するCO2を、再生可能エネルギー電力によって置き換えます。これには、豊田市渡刈クリーンセンターのバイオマス焼却熱で発電した再エネを、中部電力が買い取って既存の送電網で供給する――。

という流れです。トヨタ自動車元町工場では、22台のFCフォークリフトを導入し、年間約150トンのCO2を削減するといいます。


※トヨタ会長の内山田さん

今回の取り組みの画期的な点は、大きく二つあります。
一つは、水素が再エネを使ってつくられた「低炭素水素」であること。もう一つは、実証実験ではなく、水素のサプライチェーンが実際に稼働する「事業」であること。既存のインフラを使うことなどによって、水素の価格を抑え、採算性を改善しているのです。

水素の有用性は、ずいぶん分前からいわれ続けていますが、いまだ、コストをはじめとする多くの課題があり、普及は見えていません。

内山田さんは、「水素社会実現には、長い時間と大きな投資が必要」だと、改めて強調しました。水素社会は、突然にはやってきません。まずは小さくても取り組みをスタートし、地道に拡大していくことが必要なんですね。今回の取り組みは、その第一歩というわけです。

内山田さんは、トヨタが掲げる「環境チャレンジ2050」を踏まえて、次のように述べました。

「トヨタはゼロCO2のクルマの開発と投入に全力で取り組んでいます。並んで、工場でもCO2ゼロを目指します。その一歩目として、走行中にCO2を排出しないFCVは、製造段階でもCO2ゼロを目指して、2020年にはFCV生産工程のCO2ゼロを、元町工場で実現します」

重要なのは、仲間づくりですね。内山田さんは、「愛知だけでなく日本全国の企業の参画を期待したい。金融、農業、食品、バイオ分野など、従来は水素に関わりのなかった企業の参加も期待したい」とコメントしました。

それには、事業体が参加したくなるようなインセンティブを、いかに盛り込むかが重要になります。水素の普及に貢献することで、環境イメージにとどまらないメリットを組み込むことです。知恵が必要ですね。

水素社会は、モビリティだけの話ではありません。電力、運輸、熱・産業プロセスのあらゆる分野において低炭素化につながります。輸入に頼る化石燃料依存から脱却する意味で、エネルギーセキュリティの観点からも、水素社会の実現は求められている。

課題は山積しています。それでも、まずは初めの一歩が肝心です。その一歩は、トヨタだからこそ踏み出せる一歩ではないでしょうか。EV(電気自動車)に負けてはいられませんよ。

蛇足ながら、切磋琢磨してこそ技術は進化するのではないでしょうか。

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