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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

マツダ丸本新社長の挑戦とは

マツダは、新社長に、トヨタとの資本提携の交渉役を担った、丸本明副社長の内定を発表しました。米国でのトヨタとの共同出資工場、EVの基盤技術の開発など、トヨタを抜きにして、これからのマツダを語ることはできません。

※マツダ次期社長に内定した丸本明副社長

マツダは11日、丸本明副社長が社長に昇格する人事を内定したと発表しました。小飼雅道社長は代表権のある会長に就きます。

丸本氏は、ミニバン「MPV」の開発主査を務めるなど、技術者出身です。2013年6月に、小飼氏が社長に就任したあとは、副社長として経営を支えてきました。

今後のマツダの課題は、大きく二つあります。一つは、米国新工場の稼働に向けた足場固め、もう一つは、トヨタとの関係性の構築です。

丸本氏は、トヨタとの関係強化について次のように語りました。
「トヨタさんとは、13年秋にコンタクトし、15年の包括提携、17年の資本提携と5年のつきあいを続けてきました。お互いにとことん語り合い、学び合い、ウィンウィンの関係を築いてきました。『こういうことができませんか』と、私の方からも遠慮なくいっています」

※ガッチリと握手を交わす丸本明次期社長(左)と小飼雅道次期会長

指摘するまでもなく、マツダは、世界販売台数が年間163万台の自動車メーカーです。自動車業界が直面する100年に一度の大転換期を単独で戦うのは、厳しい。

マツダとトヨタは、15年の包括提携を経て、17年8月、米国での合弁生産やEV技術の共同開発などに向け、相互に出資する資本提携で合意しました。トヨタは、マツダが実施する第三者割当増資を引き受け、10月2日付けでマツダ株の5.05%を500億円で取得、同時にトヨタは、マツダに500億円分の自己株式を割り当てました。

果たして、マツダとトヨタの提携はうまくいくのか。提携の成果は出るのか。

忘れてはならないのは、じつは、マツダは、日本の企業ではめずらしく、提携を“得意”とする会社だということです。

マツダは、1979年から2015年までフォードと提携関係にありました。マツダにとって、フォードは“外圧”だったとはいえ、マツダはそこから多くを学びました。“外圧”を巧みに利用して、社内の危機意識をあおり、成長に向けた基盤を固めていったんですね。これは、日本企業にはなかなかできないことです。

トヨタとの提携は、互いに500億円を出資する対等な関係です。フォードのときのように支配される関係ではありません。しかも、日本企業同士ですし、トヨタには懐の深さもあります。

「当初からトヨタ、マツダは似た部分があり、目指すビジョンもよく似ています。ともにウィンウィンを目ざせると考えて協業を決断しているので、思惑通りに推移していると考えています。工場の立ち上げ、EVの共同開発を進めていますが、人事やその他の部門も交流が進んでいます。これは、当社にとってすばらしい人材育成になるので、社員の成長に向けてよい機会になっているはずです」と、小飼氏は、会見の席上、述べました。

規模の小さいマツダは、EVや自動運転などの技術では、当然、トヨタに頼る部分が出てくるでしょうが、巨大企業のトヨタにとっても、小さいが故のマツダの機動的経営から学ぶところは多いはずです。

「マツダの独自性や強みを際立たせ、存在意義を高めていきたい。つねに挑戦をし続けていきたい」と、丸本氏は語りました。

トヨタとの業務資本提携で、マツダがいかに独自力を残しながら、強みを発揮することができるか。マツダの個性をどこまで生かすことができるか。

「マツダの規模の会社は、つねに挑戦し続けることが大事だと思っています」と丸本氏は述べました。その“挑戦”という言葉には、丸本氏の強い思いが込められているといえるでしょう。

 

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