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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ホンダジェットに見るホンダ生き残りの道?

ホンダは、小型ビジネスジェットの「ホンダジェット」をグレードアップした「ホンダジェットエリート」を発表しました。ご存知の通り、ホンダジェットは、2017年、納入機数において、セスナを抜いて世界一を達成しています。


※ホンダジェット

ホンダジェットエリートは、最新技術や装備を加え、燃料タンクを大きくするなどして、航続距離は396キロメートルのびて約2661キロと、クラス最高水準。このほか、客室内の静粛性向上、離着陸時や飛行時の安定性や安全性機能も強化。ホンダジェットは、従来から、最高速度、最大運用高度、上昇性能、燃費性能、静粛性、室内サイズはクラス最高水準を誇りますが、そのうえさらに、磨きをかけたんですね。

ホンダジェットエリートは、すでに米連邦航空局(FAA)や欧州航空安全期間(EASA)の型式証明は取得済みといいます。初代ホンダジェットは、全く新しい機種だったために、型式証明の取得にとんでもなく時間がかかりましたが、既存機種のグレードアップは、そう難しくないというのは、かねてからいわれている通りですね。

以前も書きましたが、ホンダジェットは、今年3月には、ANAホールディングスと戦略的パートナーシップを組み、ANAと双日の展開する日本初のビジネスジェット専用旅行会社に協力すると発表しています。ホンダジェットエリートの登場で、ホンダジェットのビジネスは、ますます加速しそうですね。

さて、何度も書いてきたことですが、ホンダジェットはもともと、事業性よりホンダのブランド向上を期待された商品でした。たしかに、売上や利益は四輪や二輪に遠く及びませんが、いまやそのブランド効果は大きい。テレビCMでホンダジェット目にした方も多いでしょう。ホンダジェットは、ホンダの先進性を象徴する存在になっています。

もっとも、ホンダ本体が安泰かというと、それはまた別の話です。自動車業界は、100年に一度の大転換期を迎えています。そのなかで、ホンダは、今期は減益予想ではありますが、四輪の世界一の市場である中国が堅調で、足下はそこそこ安定しています。

しかし大きな目で見れば、ホンダの500万台という規模は、トヨタやフォルクスワーゲン、ルノー・日産・三菱自動車など1000万台にはまったく届かず、かといって、スバルやマツダほど小回りも効かない中途半端さです。今後、いかに生き残り戦略を描くのか、答えが出たわけではありません。

先だって、ホンダのある幹部に「ホンダはとんがった商品をつくるには大きくなりすぎたのではないか」と、ついせんないことをいったら、彼はこう答えました。
「おっしゃる通り、ホンダの規模は極めて中途半端です。が、自動車以外に活路を見出す必要がある現在には、ちょうどいいとも思っています」

自動車の未来が不透明ななかで、ホンダは、二輪や汎用エンジンなどの既存事業はもとより、ロボティクスやAIなどの新規事業にも注力しています。ホンダジェットも、自動車以外の事業の一つです。新規事業を生み出そうとすれば、小さすぎては体力がもたず、大き過ぎては動きが鈍くなる。中途半端がいいときもあるのかもしれません。

ホンダジェットは、二輪や四輪が稼いでいたからこそ実現した新規事業です。それが、いまや成功しつつある。新規事業創出の一例としても、ホンダジェットは、ホンダにとって重要な役割を担っているといえるでしょう。

昨年上梓した拙著『技術屋の王国 ホンダの不思議力』(東洋経済新報社)では、ホンダジェットの誕生秘話を詳述しています。

また、ホンダが昨年に設置した、AIやロボット技術、モビリティシステムなどの研究開発施設である「R&DセンターX」などについても、詳述しています。この機会に、ぜひご一読ください。

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