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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

パナソニック樋口さんはIR説明会の席上、何を語ったか

今日、パナソニックは、IR説明会を行いました。社内カンパニー4社について、それぞれのトップが説明に立ちました。

注目の一つは、昨年4月、日本マイクロソフト会長からパナソニックに“出戻り”した樋口泰行さん率いるCNS(コネクティッドソリューションズ)社です。樋口さんは、本社の代表取締役と同時に、CNS社の社長を務めているんですね。


※CNS社社長の樋口さん(2017年12月)

昨年のCNS社の業績は、売上高1兆1193億円、営業利益1057億円で、前身のAVCネットワークス社時代から数えて2年ぶりの増収増益でした。

ちょうど一年前のIR説明会の席上、樋口さんは、大阪・門真にあったCNS社本社を、東京に移転すると発表して関係者を驚かせました。当時もブログを書きましたが、実際、10月に東京移転したんですね。以来、来訪する顧客数は2.7倍になったといいますから、「顧客接点最大化」の目的は、果たされたといっていいでしょう。

今日、CNS社の改革について、樋口さんは「三階建て」と表現しました。
「一階は、まずは文化面の改革。二階は、ボックスセリングからソリューションへのレイヤーアップ。三階は、選択と集中による長期的な高収益体質への転換です」

東京移転は、一階の文化面の改革の一環でもあった。新しいCNS社本社では、フリーアドレスを導入し、社長室も廃止。ドレスコードも緩くなった。クロスバリューの取り組みを加速し、社内コミュニケーションとしてチャットを活用するなど、フラットで俊敏なカルチャーへの改革を進めました。

「こういった取り組みを、ふと考えると、自分が26年前に辞めた理由を、一生懸命、排除しているのかな、と気づきました」と、樋口さんはコメントしました。

ただし、二階と三階は、「一年くらいでは変わらない」といいます。というのは、単品売り切りからソリューションへの変化によって、求められる人材スキルが変わります。しかし、雇用の流動性の低い国内では、人材自体をガラリと入れ替えることは、実質的に不可能です。したがって、内部にいる人材のスキルチェンジを図る必要がある。これには、当然、時間がかかるのです。

昨年、欧州の物流支援企業ゼテスを買収するなど、ソリューション企業のM&Aを進めているのは、ソリューションのスキルをもつ人材を取り込むためでもありますよね。

CNS社は、今期、大型の航空機の生産減の影響から、アビオニクス事業が足を引っ張り、減収減益予想です。それでも、樋口さんは、「あくまでも増収増益を目指したい」とし、そのために、売り上げ増はもちろん、「利益への感度を高めていく」と語りました。

文化面の改革が、どこまで数字に表れているか「証明は難しい」としながらも、「週報の廃止など、馬鹿らしいことは一切やめようと進めてきたことが、ベースの底上げになっていると思います」といいます。そして、「事業立地など、収益性に関する感度も上がっています。売上は増やさないといけないが、それ以上に、利益に感度高く運営していきたい」と強調しました。

これを聞いて、昨年12月、樋口さんにインタビューした際、「日本企業の間接部門は、給料は天から降ってくると思っている」と話していたのを思い出しました。

樋口さんは、アップル、HP、マイクロソフトなど、外資系企業が長く、成果を求められ続けることに慣れている。その点、日本企業の「利益への感度の低さ」、すなわち“緩さ”が気になるのではないでしょうか。

ホワイトカラーの生産性向上という意味では、CNS社に限らず、パナソニック全体には、もっともっと余地があるはずですよね。

樋口さんには、CNS社のビジネスを軌道に乗せることに加えて、パナソニック全体の変革を、CNS社から牽引していくという役割が期待されています。そのためにも、一階の文化面の改革は、これからも進めていかなければならない。加えて、二階、三階の改革に、どこまで道筋をつけられるか。樋口さんの果たすべき役割は、大きいですね。

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