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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日産は〝関税率25%発動〟を注視

米国発の貿易摩擦が自動車業界に影響を及ぼし始めています。日産はすでに、さまざまなシミュレーションを実施し、アクションを準備しています。

※日産の田川丈二常務執行役員

日産自動車が26日に発表した2018年4~6月期の連結決算は、売上高が前年同期比1.6%減の2兆7166億円、営業利益は同29%減の1091億円でした。グローバル販売台数は131万台と同3%減少しました。利益悪化の要因は、原材料の高騰や為替の円高の影響のほか、研究開発費用が前年同期より増えたことも響いています。

「第1四半期は、米国と欧州の販売の減少が大きく響きました。もともと販売台数の厳しいところは回復したものの、原材料価格の上昇と為替の影響が相殺できませんでした。下期は新車効果が出てくるので、ほぼ計画に沿うかたちになると見ています」と、横浜本社で会見した日産常務執行役員の田川丈二さんは語りました。

2019年3月期通期の連結業績予想は据え置きました。

日産は、主力とする北米市場の販売で、インセンティブ(販売奨励金)がかさみ、収益悪化を招いています。それに加えて、かりにも米国が自動車輸入関税を25%に引き上げれば、多額の追加費用が発生します。

25日の米欧首脳会談で自動車への追加関税の棚上げが示唆されたものの、自動車への関税の発動が完全に消えたわけではありません。

「リスクがなくなったわけではない。引き続き状況を注視していきたい」と、田川さんはコメントしました。

日産は現在、関税が引き上げられた場合に対して、さまざまなシミュレーションを実施し、アクションを準備しています。

「輸入車で一台当たり6000ドルのコスト増になる。現地生産車でも、部品の輸入分で2000ドルのコスト増になる。関税が上がったからといって値上げするわけにはいかない」(田川さん)

つまり、日産はドル箱の北米市場において、多額のインセンティブと自動車輸入関税の二つに苦しめられる可能性が出てきているんですね。

田川さんも会見で触れていましたが、米国発の貿易摩擦は、すでに米国企業の業績に悪影響を及ぼし始めています。米ゼネラル・モーターズ(GM)は25日に発表した2018年4~6月期決算で業績の下方修正を発表しました。米国が発動した鉄鋼とアルミニウムへの追加関税により、原材料費が上昇したためです。

自動車メーカーにとって、米国発の貿易摩擦の影響は、想定以上に大きくなりそうです。日本の自動車メーカーは、アメリカでの現地生産の拡大を進めるしか手立てはないのか。20年前の貿易紛争が再燃するのか。自動車メーカー各社は、さまざまな局面をシミュレーションし始めています。

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