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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日産ゴーン氏の不正、なぜ見抜けなかったのか

日産前会長のカルロス・ゴーン氏をめぐる事件では、有価証券報告書の役員報酬の過少記載、また、会社資金の不正流用などが問題になっています。

有価証券報告書は、本来、その内容を、社内の監査役、あるいは社外の監査法人がチェックし、「適正に表示している」ことを確認しているはずです。数十億円もの虚偽記載や不正流用を、監査役や監査法人は、なぜ見抜けなかったのか。疑問視する声が出ていますが、当然の話ですよね。

日産社長の西川廣人さんは、19日の会見の席上、なぜ見抜けなかったのかという記者の質問に対して、次のように答えました。
「会社の中の仕組みが形骸化していて、透明性が低い。要するにガバナンスの問題が大きいと思います。(ゴーン氏は)株主の代表者であり、執行権もあり、日産の取締役会の議長でもあるということで、本来のオープンなガバナンスから見ると注意をしなければいけない権力構造だった」

※西川廣人さん(11月19日)

日産によれば、今回の件は、「内部の通報に端を発して監査役からの問題提起を経て、社内調査を行った結果」、重大不正の事実確認に至ったといいます。ガバナンス上の問題から、気付くのが遅れたとはいえ、一応、内部告発は機能しており、さらに監査役も役割を果たしています。

監査法人については、確かに、見抜けなかったことは問題です。ただし、そもそも、監査法人にとって、企業はお客様です。耳の痛いことはいいにくい。また、有価証券報告書や決算報告書の数字については、東芝の不正会計事件を見てもわかる通り、じつは、故意に誤魔化そうとすれば、いくらでも誤魔化せるといわれているんです。

財務情報の開示は、会社法、金融証券取引法、証券取引所規則などで定められています。例えば証券取引所規則では、年度ごとの決算短信は、決算期末から45日以内ということになっています。が、多くの企業は3月末決算ですから、監査法人には、その時期、監査すべき書類が山積みになります。それを、それぞれの企業の「決算発表日」の事情に合わせて、間に合うように短期間ですべてチェックしなくてはならない。これは大変な作業です。

グローバルに展開する大企業ほど、チェックすべき項目、情報は膨大ですよね。海外を含め、子会社の数は数百となる場合もあります。海外の子会社、さらにグループ会社の子会社となると、追跡は困難になります。

グローバル企業に限らず、パナマ文書に象徴されるように、バージン諸島やケイマン諸島の“租税回避地”を利用して、会計処理を行えば、ほとんど追跡は不可能になります。かりに突きとめても、証拠文書の提出をしぶりますし、時間がかかります。事実上、不可能に近いといわれています。

今回のゴーン事件でも、“租税回避地”を利用して“不正”を隠しているのではないかといわれています。ゴーン氏の海外住宅は、連結対象外のオランダ子会社が租税回避地につくった会社を通して購入していたとされますが、これだけ入り組んだ仕組みをつくられると、短期間に膨大な情報を処理する監査法人では、簡単には見つけられないというのが、正直なところではないでしょうか。

金融証券取引法に定められた有価証券報告書は、証券取引所規則や会社法に定められた書類とはまた別モノで、フォームも、中身も違う。こちらは事業年度終了後3カ月以内に開示しなければならないことになっています。しかも、大企業では膨大なボリュームです。ぶっちゃけた話が、やはり、「叩けば埃が出る」といわれており、すべての数字がまったく間違いないかを、短時間のうちに確認することは、難しいんですね。

となると、何のための監査法人か、となってしまいますが、やはり、限界があるとしても、内部統制を強化するために外部の監査は欠かせません。企業も、監査法人も、不正を防ぐための努力を絶えず続けていくしかありませんが、巨大グローバル企業の場合、きれいごとをいっても空しさは常につきまといます。これは、グローバル企業の盲点といっていいでしょうね。

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