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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ホンダの欧州生産撤退の理由は

ホンダは、19日、英国の完成車生産を2021年中に終了すると発表しました。また、トルコの工場も同年中に生産を終了します。

会見した社長の八郷隆弘さんは、英国生産撤退について、「BREXIT(ブレグジット)とは関係ありません」と、何度も強調しました。しかし、英国の「合意なき離脱」の可能性が高まるなかで、先行きが不透明なことは無関係とはいいきれないでしょう。

※ホンダ社長の八郷隆弘さん

もっとも、「生産配置と生産能力の適正化」というのも、建前だけではありませんね。

英国生産撤退の背景の一つには、英国をはじめ、欧州でのホンダの販売不振があります。英国の工場では、「シビック」のハッチバックを昨年約16万台生産しましたが、その約55%が北米向けで、輸出は全体の65%を占めていました。ホンダの「需要のあるところで生産する」という考え方に、そぐわない。

ホンダの欧州域内2018年の販売台数は、約13万台、シェアは1%に満たない。その状況下で、近年、欧州は環境規制によって、電気自動車やハイブリッド車などの電動車の需要が高まっています。しかし、ホンダには、欧州で競争力の高い電動車を生産する余裕は、ないんですよね。

では、どうするか。競争力の高い電動車を輸入し、欧州で販売する体制に変更する。競争力の高い電動車をつくれるところとは、つまり、日本、そして中国です。国内では、寄居工場を、グローバルの電動車の旗艦工場として、生産技術の拠点にする方針です。

加えて、中国です。中国の自動車産業は、いまや世界最先端です。国を挙げて自動車産業の強化を図り、現地メーカーも力をつけてきています。電動化だけでなく、コネクティッドや自動運転などの技術も、日本よりよほど進んでいる。いまや、中国で成功するクルマは、世界に通用するクルマだと考えていいでしょう。

「欧州は、環境規制の方向性が近い中国と商品ラインナップを共有するなど、戦略的に電動化を含めた事業基盤の強化を図ります」
と、八郷さんはコメントしましたが、これは、環境規制に限らず、コネクティッドや自動運転技術、シェアリングなどについてもいえることだと思いますね。

今回、ホンダは、生産体制の変更のほかにも、二輪、四輪、パワープロダクツ、また研究・開発領域の運営体制の変更を発表しました。

例えば、二輪車の事業本部とR&Dセンターを一体化させ、意思決定のスピード化を図る。また、四輪車は副社長が事業本部長を担当し、その下に、グローバル戦略や新たなモビリティサービスを担う「四輪事業担当」と、既存事業の営業戦略を推進する「四輪営業担当」の責任者を置く体制をとり、各機能を強化する。研究開発領域は、「先進技術研究」と「商品開発」の組織を分けるなど、各領域に集中できるよう再編する、などです。

何度もいいますが、自動車産業は、いま、「CASE(コネクティッド・自動運転・シェアリング・電動化)」の大変革期を迎えている。開発や生産、販売をはじめ、組織のオペレーションやマネジメントも、これに合わせた体制を構築し直すことが求められています。

新たな体制がうまく機能するかは、まだわからない。しかし、今回のホンダの運営体制の変更も、大変革への対応の一環であるのは、間違いないでしょうね。

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