Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタが増益を確保したもう一つの理由

トヨタ自動車が12日に発表した2021年3月期連結決算は、コロナ禍にもかかわらず、最終利益が前期比10%増の2兆2452億円となったことに注目が集まりましたが、もう一つ、目を引いたことがあります。それは、オンライン会見に出席した執行役員の顔触れです。

※トヨタ自動車CEOの豊田章男氏

トヨタは2020年12月3日、2021年1月1日付けの役員人事を発表。4人の若手幹部を執行役員に登用し、社長の豊田章男氏を筆頭に「チーフオフィサー」10人体制としました。

新しく執行役員になったのは、コネクテッドカンパニーのトップの山本圭司氏、工場統括の岡田政道氏、広報や販売を担当する長田准氏、「レクサス」やスポーツ車を担当する佐藤恒治氏です。

これまで現場を支えてきた河合満氏、技術の寺師茂樹氏、友山茂樹氏は執行役員を退任し、結果、執行役員の平均年齢は59.3歳から56.1歳に若返りました。

12日、オンラインで行われた決算説明会には、新しく執行役員になった長田准氏、岡田政道氏のほか、2019年に執行役員になったチーフ・フィナンシャル・オフィサーの近健太氏、同じく2019年に執行役員になったチーフ・テクノロジー・オフィサーの前田昌彦氏、チーフ・デジタル・オフィサーで、ウーブン・プラネット・ホールディングス代表取締役CEOのジェームス・カフナー氏が出席しました。

顔ぶれを見て、「おおっ!」と思いましたね。

思い起こせば、2018年2月、静岡県湖西市の豊田佐吉記念館に、豊田章男氏のほか、6人の副社長が集合し、血判状を作成しました。ここで誕生したのが、「7人の侍」といわれる経営チームです。

「7人の侍」たちは、章男氏の「第1ステージ」を支えた側近の面々です。

それから3年弱、「7人の侍」の時代は幕を閉じ、トヨタは「第2ステージ」の開幕に向けて、現在の経営チームへと刷新を図ったんですね。

こういってはなんですが、「7人の侍」には、昭和のかおりが漂っていました。トヨタの不気味で底知れぬパワーを印象づけられたのはたしかですが、血判状の作成からして、昭和のオヤジの発想ですし、「7人の侍」の〝結団式〟の写真には、どことなく悲壮感さえ感じられました。

それに比べて、現在の経営チームの顔ぶれは、なんといってもフレッシュです。まさしく令和の時代を引っ張る経営陣です。

次々と登場する新しい技術に対応し、モビリティカンパニーへの転換やウーブン・シティへの挑戦、ソフトウェアファーストなど、新規事業にスピード感をもって臨むには、何よりも若いセンスが必要ですからね。

今回の決算説明会は、年次決算にもかかわらず、社長の豊田章男氏は出席せず、新しい経営チームがその責務を担いました。その意味で、豊田氏があえて欠席したことには、大きな意味がありそうです。

つねに前進を続ける豊田章男氏は、これまでも継続的に人事および組織改正を行いながら、トヨタを強くしてきました。コロナ禍の逆風の中でトヨタが躍進を続けられる理由は、ここにもあるように思います。

ページトップへ